2017年7月21日金曜日

第70号

●更新スケジュール(2017年8月4日)

二十八年度芸術選奨文部科学大臣賞受賞‼
恩田侑布子句集『夢洗ひ』

第4回攝津幸彦記念賞 》詳細
※※※発表は「豈」「俳句新空間」※※※

各賞発表プレスリリース
豈59号 第3回攝津幸彦記念賞 全受賞作品収録 購入は邑書林まで



平成二十九年 俳句帖毎金00:00更新予定) 
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平成二十九年 花鳥篇

第五(7/28)田中葉月・花尻万博・羽村美和子・浅沼璞
第四(7/21)林雅樹・内村恭子・ふけとしこ・小野裕三・木村オサム・前北かおる・加藤知子
第三(7/14)池田澄子・堀本 吟・山本敏倖・岸本尚毅・夏木久・中西夕紀・渕上信子
第二(7/7)辻村麻乃・小沢麻結・渡邉美保・神谷波・椿屋実梛・松下カロ・仲寒蟬
第一(6/30)仙田洋子・大井恒行・北川美美・早瀬恵子・杉山久子・曾根毅・坂間恒子


平成二十九年 春興帖
第十(6/23)水岩瞳・北川美美・早瀬恵子・小沢麻結・佐藤りえ・筑紫磐井
第九(6/16)下坂速穂・岬光世・依光正樹・依光陽子・真矢ひろみ・西村麒麟・望月士郎
第八(6/9)羽村美和子・渕上信子・関根誠子・岸本尚毅・小野裕三・山本敏倖・五島高資
第七(6/2)前北かおる・神谷波・青木百舌鳥・辻村麻乃・浅沼 璞・中村猛虎
第六(5/26)渡邉美保・ふけとしこ・坂間恒子・椿屋実梛
第五(5/19)内村恭子・仲寒蟬・松下カロ・川嶋健佑
第四(5/12)仙田洋子・木村オサム・小林かんな・池田澄子
第三(5/5)夏木久・網野月を・林雅樹
第二(4/28) 杉山久子・曾根 毅・堀本 吟
第一(4/21) 加藤知子・田中葉月・花尻万博



●新シリーズその1
【西村麒麟特集】北斗賞受賞記念!
受賞作150句について多角的鑑賞を試みる企画
西村麒麟・北斗賞受賞作を読む インデックス  》読む
【西村麒麟・北斗賞受賞作を読む0】 序にかえて …筑紫磐井
【西村麒麟・北斗賞受賞作を読む1】 北斗賞150句 …大塚凱
【西村麒麟・北斗賞受賞作を読む2】「喚起する俳人」…中西亮太
【西村麒麟・北斗賞受賞作を読む3】 麒麟の目 …久留島元
【西村麒麟・北斗賞受賞作を読む4】「屈折を求める」…宮﨑莉々香
【西村麒麟・北斗賞受賞作を読む5】「思ひ出帖」…安里琉太
【西村麒麟・北斗賞受賞作を読む6】きりん…松本てふこ
【西村麒麟・北斗賞受賞作を読む7】西村麒麟「思ひ出帳」を読む…宮本佳世乃  》読む

●新シリーズその2
【平成俳壇アンケート】
間もなく終焉を迎える平成俳句について考える企画
【平成俳壇アンケート 回答1】 筑紫磐井 …》読む
【平成俳壇アンケート 回答2・3】 島田牙城・北川美美 …》読む
【平成俳壇アンケート 回答4・5】 大井恒行・小野裕三》読む
【平成俳壇アンケート 回答6・7・8】 花尻万博・松下カロ・仲寒蟬》読む
【平成俳壇アンケート 回答9・10・11】 高橋修宏・山本敏倖・中山奈々》読む
【平成俳壇アンケート 回答12】 堀本吟》読む
【平成俳壇アンケート 回答13】 五島高資》読む


【抜粋】
<俳句四季8月号> 
新壇観測175/現代俳句協会の創設  ——協会の復興と分裂をたどる
筑紫磐井 》読む


  • 「俳誌要覧2016」「俳句四季」 の抜粋記事  》見てみる




<WEP俳句通信>





およそ日刊俳句空間  》読む
    …(今までの執筆者)竹岡一郎・青山茂根・今泉礼奈・佐藤りえ・依光陽子・黒岩徳将・仮屋賢一・北川美美・大塚凱・宮﨑莉々香・柳本々々 … 
    • 7月の執筆者 (柳本々々・渡邉美保) 

      俳句空間」を読む  》読む   
      …(主な執筆者)小野裕三・もてきまり・大塚凱・網野月を・前北かおる・東影喜子
       好評‼大井恒行の日々彼是  》読む 




      【評論】
      アベカン俳句の真髄 ー底のない器ー   … 山本敏倖  》読む





      あとがき(筑紫磐井)  》読む



      冊子「俳句新空間 No.7 」発売中!
      No.7より邑書林にて取扱開始いたしました。
      桜色のNo.7


      筑紫磐井 新刊『季語は生きている』発売中!

      実業広報社


      題字 金子兜太

      • 存在者 金子兜太
      • 黒田杏子=編著
      • 特別CD付 
      • 書籍詳細はこちら (藤原書店)
      第5章 昭和を俳句と共に生きてきた
       青春の兜太――「成層圏」の師と仲間たち  坂本宮尾
       兜太の社会性  筑紫磐井


      【抜粋】〈「俳句四季」8月号〉俳壇観測175/現代俳句協会の創設 ――協会の復興と分裂をたどる  筑紫磐井



      協会を創設した世代
      現代俳句協会がこの秋で七〇周年を迎える。私なりに協会の活動を中心に戦後俳句史を振り返ってみたいと思う。
      昭和二二年九月、現俳協は俳人の生活の安定などの目的で創立された。創設時の会員(いわば原始会員)は次の三八名だった。名簿はよく知られているがこの時の会員の年齢は余り知られていない。見てみると興味深い。

      安住敦(40)、有馬登良夫(36)、井本農一(34)、石田波郷(34)、石塚友二(41)、大野林火(43)、加藤楸邨(42)、神田秀夫(34)、川島彷徨子(37)、孝橋謙二(39)、西東三鬼(47)、志摩芳次郎(39)、篠原梵(37)、杉浦正一郎(36)、高屋窓秋(37)、滝春一(46)、富澤赤黄男(45)、中島斌雄(39)、永田耕衣(47)、中村草田男(46)、中村汀女(47)、西島麦南(52)、橋本多佳子(48 )、橋本夢道(44)、日野草城(46)、東京三(46)、平畑静塔(42)、藤田初巳(42)、松本たかし(41)、三谷昭(36)、八木絵馬(37)、山口誓子(46)、山本健吉(40)、横山白虹(48)、渡辺白泉(34)、池内友次郎(41)、栗林一石路(53)、石橋辰之助(38)

      壮観な顔ぶれだが、このうち四〇代が21人、三〇代が15人であり、当時の俳句がいかに若かったかが分かる。都市伝説によれば、誓子と草田男の年齢(46歳)で足切りをしたとされている(『現代俳句協会五〇年史』)が、しかし一方で、麦南、一石路のような五〇代もいるし、二三年には後藤夜半(53)さえ入会している。じつは入会資格の実体は、①旧世代の虚子、蛇笏、そして(誓子以外の)4Sを排除し、新興俳句・人間探究派を中心とする、②波郷以下の戦後世代を排除する、の二基準が働いていたと思われる。当時の社会状況であるレッドパージを知れば容易にこれは想像できる。
       創設時の協会の主要な活動は、機関誌「俳句と芸術」の発行(桃蹊書房)、幹事会(代表は、波郷→不死男→登良夫→不死男と推移)、茅舎賞の設定とその選考であったが、二三年こそ活発だったが、二四年からは沈滞化する。例えば桃蹊書房の倒産で「俳句と芸術」は休刊、茅舎賞は三年間中断した。

      協会を復興した世代
       こうした停滞の中で、主要幹事たちは入会資格の下限(②)を取り払うことにした。選挙の結果、二七年は16人中3人、二八年は50名中22名が三〇代会員となった(一部年齢不詳者あり)。会員総数一〇〇名のうち三〇代の会員は次の通りとなる(ぎりぎりの能村登四郎、古沢太穂を入れてもいいだろう)。

      【二七年入会】角川源義(35)、伊丹三樹彦(32)、沢木欣一(33)[数字は入会時の年齢]
      【二八年入会】石原八束(34)、飯田龍太(33)、小寺正三(39)、金子兜太(34)、桂信子(39)、楠本憲吉(31)、香西照雄(36)、小西甚一(38)、佐藤鬼房(34)、島崎千秋(32)、清水基吉(35)、杉山岳陽(39 )、鈴木六林男(34)、田川飛旅子(39)、高島茂(33)、高柳重信(30)、土岐錬太郎(33)、西垣脩(34)、野見山朱鳥(36)、原子公平(34)、目迫秩父(37)、森澄雄(34) 

      この名簿を見れば、戦後派世代の陣容がほぼ出揃ったことが分かる。と同時に、二四年~二七年を「沈滞の時代」と呼ぶとすれば、戦後派世代が揃う二八年は現代俳句協会の「復興の時代」といってよかった。
      (中略)
          *     *
       既に歴史的事実であるからこれを批判しようとは思わない。世代がそれぞれの論理を持っていることは当然であるからだ。しかし驚くのは、現俳協の創立時が四〇代・三〇代の作家、彼らを脅かす次の後続の世代も三〇代で構成されていたことだ。
       昨年俳句年鑑でこの世代を担当したのでその名簿を眺めてみたが、協会創立世代の年齢(四〇代)の作家は山田耕司、山根真矢、津川絵里子、五島高資、高山れおなといった顔ぶれに当たる。これを狙撃する世代(三〇代)が阪西敦子、大高翔、北大路翼、村上鞆彦、大谷弘至、高柳克弘となるのだろうか(これ以上の世代はパージされていた)。果たして現在の彼らにあんな元気はあるのだろうか。

      ※詳しくは「俳句四季」8月号をご覧ください。


      【平成俳壇アンケート 第13回】五島高資

      ■五島高資

      1.回答者のお名前( 五島高資

      2.平成俳句について

      ①平成を代表する1句をお示しください( よく眠る夢の枯野が青むまで 金子兜太

      ②平成を代表する俳人をお書きください。判断が難しいので2つに分けて結構です。

      ➊大家・中堅( 金子兜太
      ➋新人( 関悦史

      ③平成を代表する句集・著作をお書きください。
            ( 筑紫磐井 著 『21世紀俳句時評』

      ④平成を代表する雑誌をお示しください。(        )

      ⑤平成俳句のいちばん記憶に残る事件を示してください。(        )

      ⑥比較のために、俳句と関係のない大事件を示してください。(        )

      3.俳句一般

      ①時代を問わず最も好きな俳人を上げてください。( 松尾芭蕉

      ②時代を問わず最も好きな俳句を示してください。( 旅に病んで夢は枯野をかけ廻る

      4.その他
      (自由に、平成俳壇について感想をお書きください)



      【西村麒麟・北斗賞受賞作を読む7】西村麒麟「思ひ出帳」を読む 宮本佳世乃



      麒麟さんと会うのはだいたい酒席だ。そこで見る彼は、どこか飄々としていながら、正直そうな印象だ。裏表がなさそうというか、計算がうまくなさそうといった感じ。
      この150句を読んだとき、だいたいが、昼寝をしているか、飲んでいるか、食べているか、ぼうっとしているか、のどれかに当てはまることに気づいた。平和な、長閑な世界に「ある」句だ。
      たとえば、

      鱧食うて昼寝の床に戻るのみ
      朝寝から覚めて畳の大広間
      ゆく秋や畳の上に昼寝して
      少し寝る夏座布団を腹に当て
      腸捻転元に戻してから昼寝


      鱧を食べたがその後は眠るのみ。眠るのは、地平と続いている疊で、広がりがある。
      甚平とかゆったりしているものを着ているに違いない。腸捻転は痛いんだけれども、すぐに元どおり(ちょっと嘘)。といった具合。なんなんだ、この余裕は。
      でも、眠っているわけではない。
      なにかあったらさっと起きられるように、ちょっとだけ横になる。

      きっと、ちょっとだけ寝るのは、飲んでいるからだろう。

      朝鮮の白き山河や冷し酒
      秋の昼石が山河に見えるまで
      火男をやり終へて飲む秋の酒
      呉れるなら猫の写真と冷の酒
      金沢の見るべきは見て燗熱し


      ビールとかワインではなく、酒である。しかもどの酒もおいしそうだ。

      なぜ、ちょっとだけ横になったり、酒を飲むのがよさそうなのか。
      それは、「ちょっとよさげな日常を切り取った一コマ」に見えるからだと思う。日常的な言葉を使いながら、生活に関係することを描きながら、じつは、その「日常的」なものは普段、もっというと一年のうちのほとんどの「日常」ではないのではないか。
      出かけたとき、旅をしているとき、帰省しているとき、休日、など、自分がリラックスしているときの風景は、ある意味格別で、ひとつひとつが「(良い)思い出」として記憶される。この150句のタイトル「思ひ出帳」にもあらわれているとおり、これらの作品は、スケッチの連続、なのかもしれない。

      集中には、このような句もある。

      踊子の妻が流れて行きにけり

      何をぬけぬけと、と思うけれども、ここに書かれていることは、けっこう恐ろしい。どこを流れているかは書かれていないけれど、自分は流れないし、助けないのだから。

      友達が滑つて行きぬスキー場

      これも、自分はゲレンデにいなさそうだ。

      喘息の我を見ている竹夫人

      苦しいけれど、自分以外誰もいない。そして我を見ているのは、俯瞰したところにいる我。

      文鳥に覗かれてゐる花疲れ

      文鳥には、疲れているのが分かる。むしろ、覗かれなければ、分からない。

      蟋蟀の影より黒くゐたりけり

      黒くゐるのは。
      これらは、「ちょっとよさげな日常」ではない。少し冷めた眼で世の中を見ている。「ちょっとよさげな日常」は、普段は手が届きそうなところにありながら、もう一歩のところで届かない。
      俳句を書くときに、平和な、長閑な世界に「ある」ことを望みながら、一方で、現実を踏みしめている句がある。そんなところが、正直さにつながっていくのだと思う。

      麒麟さんの句の真骨頂は、飄々とした明るさ、そして愛らしさだろう。
      このような句を見るたびに、昼酒を飲み、昼寝をしたくなるのだから、かなわない。

      白鳥の看板があり白鳥来
      穭田の千葉が広々ありにけり
      夕立が来さうで来たり走るなり
      烏の巣けふは烏がゐたりけり
      秋の金魚秋の目高とゐたりけり
      虚子とその仲間のやうに梅探る



      (編集者より。本BLOGの読者の中で、西村麒麟論を書いてみたいという方は、西村麒麟あてご連絡を頂きたい。未公開の150句をお送りするので読んだうえ評論を送っていただければありがたい。)宛先:kirin.nishimura.819★gmail.com(★を@に打ち換えてください)


      2017年7月7日金曜日

      第69号

      ●更新スケジュール(2017年7月21日)

      二十八年度芸術選奨文部科学大臣賞受賞‼
      恩田侑布子句集『夢洗ひ』

      第4回攝津幸彦記念賞 》詳細
      ※※※発表は「豈」「俳句新空間」※※※

      各賞発表プレスリリース
      豈59号 第3回攝津幸彦記念賞 全受賞作品収録 購入は邑書林まで



      平成二十九年 俳句帖毎金00:00更新予定) 
      》読む

      平成二十九年 花鳥篇

      第四(7/21)林雅樹・内村恭子・ふけとしこ・小野裕三・木村オサム・前北かおる・加藤知子
      第三(7/14)池田澄子・堀本 吟・山本敏倖・岸本尚毅・夏木久・中西夕紀・渕上信子
      第二(7/7)辻村麻乃・小沢麻結・渡邉美保・神谷波・椿屋実梛・松下カロ・仲寒蟬
      第一(6/30)仙田洋子・大井恒行・北川美美・早瀬恵子・杉山久子・曾根毅・坂間恒子


      平成二十九年 春興帖
      第十(6/23)水岩瞳・北川美美・早瀬恵子・小沢麻結・佐藤りえ・筑紫磐井
      第九(6/16)下坂速穂・岬光世・依光正樹・依光陽子・真矢ひろみ・西村麒麟・望月士郎
      第八(6/9)羽村美和子・渕上信子・関根誠子・岸本尚毅・小野裕三・山本敏倖・五島高資
      第七(6/2)前北かおる・神谷波・青木百舌鳥・辻村麻乃・浅沼 璞・中村猛虎
      第六(5/26)渡邉美保・ふけとしこ・坂間恒子・椿屋実梛
      第五(5/19)内村恭子・仲寒蟬・松下カロ・川嶋健佑
      第四(5/12)仙田洋子・木村オサム・小林かんな・池田澄子
      第三(5/5)夏木久・網野月を・林雅樹
      第二(4/28) 杉山久子・曾根 毅・堀本 吟
      第一(4/21) 加藤知子・田中葉月・花尻万博



      ●新シリーズその1
      【西村麒麟特集】北斗賞受賞記念!
      受賞作150句について多角的鑑賞を試みる企画
      西村麒麟・北斗賞受賞作を読む インデックス  》読む
      【西村麒麟・北斗賞受賞作を読む0】 序にかえて …筑紫磐井
      【西村麒麟・北斗賞受賞作を読む1】 北斗賞150句 …大塚凱
      【西村麒麟・北斗賞受賞作を読む2】「喚起する俳人」…中西亮太
      【西村麒麟・北斗賞受賞作を読む3】 麒麟の目 …久留島元
      【西村麒麟・北斗賞受賞作を読む4】「屈折を求める」…宮﨑莉々香
      【西村麒麟・北斗賞受賞作を読む5】「思ひ出帖」…安里琉太
      【西村麒麟・北斗賞受賞作を読む6】きりん…松本てふこ  》読む

      ●新シリーズその2
      【平成俳壇アンケート】
      間もなく終焉を迎える平成俳句について考える企画
      【平成俳壇アンケート 回答1】 筑紫磐井 …》読む
      【平成俳壇アンケート 回答2・3】 島田牙城・北川美美 …》読む
      【平成俳壇アンケート 回答4・5】 大井恒行・小野裕三》読む
      【平成俳壇アンケート 回答6・7・8】 花尻万博・松下カロ・仲寒蟬》読む
      【平成俳壇アンケート 回答9・10・11】 高橋修宏・山本敏倖・中山奈々》読む
      【平成俳壇アンケート 回答12】 堀本吟》読む


      • 「俳誌要覧2016」「俳句四季」 の抜粋記事  》見てみる




      <WEP俳句通信>





      およそ日刊俳句空間  》読む
        …(今までの執筆者)竹岡一郎・青山茂根・今泉礼奈・佐藤りえ・依光陽子・黒岩徳将・仮屋賢一・北川美美・大塚凱・宮﨑莉々香・柳本々々 … 
        • 7月の執筆者 (柳本々々・渡邉美保) 

          俳句空間」を読む  》読む   
          …(主な執筆者)小野裕三・もてきまり・大塚凱・網野月を・前北かおる・東影喜子
           好評‼大井恒行の日々彼是  》読む 




          【評論】
          アベカン俳句の真髄 ー底のない器ー   … 山本敏倖  》読む





          あとがき(筑紫磐井)  》読む



          冊子「俳句新空間 No.7 」発売中!
          No.7より邑書林にて取扱開始いたしました。
          桜色のNo.7


          筑紫磐井 新刊『季語は生きている』発売中!

          実業広報社


          題字 金子兜太

          • 存在者 金子兜太
          • 黒田杏子=編著
          • 特別CD付 
          • 書籍詳細はこちら (藤原書店)
          第5章 昭和を俳句と共に生きてきた
           青春の兜太――「成層圏」の師と仲間たち  坂本宮尾
           兜太の社会性  筑紫磐井


          【西村麒麟・北斗賞受賞作を読む6】きりん 松本てふこ



           一緒にいる時は真面目な話をするよりも、楽しくふざけながら酒を飲んでいることが多い友達の西村麒麟から、彼の作品に関して熱い文章を書いてくれと頼まれた。
           西村麒麟は「スピカ」での「きりんのへや」、もしくは代表句から、酒を愛しのんべんだらりと暮らす隠者のようなイメージを俳壇で持たれているように思う。それは決して間違いではない。だがしかしそうした面はあくまで彼の一面でしかない。
           彼と酒を飲んでいて、時々俳句の話になる。自分がつまらないと思う俳句や俳人の話題になると彼は、急に冷え冷えとした眼になる。口調も一気に冷たくなる。なんとまあ、分かりやすい。私はそういう時の彼の眼が正直ちょっと怖い。だがそこで妙に怯えるのも格好悪いので、何も気にしていませんよという顔で変わらず酒を飲むことにしている。
           
           筑紫磐井は麒麟を「若くして老成、誰とでもつきあえるがしかし結構シニカル、自分を主張しないが独自の個性、という不思議な作家」と『俳句年鑑』で評していた。「思ひ出帳」150句を読むと確かにそうだな、と彼の言葉に納得する部分もあればそうでもない部分もある。そういうことをつらつらと書いていこうと思う。

            踊子の妻が流れて行きにけり
            夏蝶と遊ぶや妻とその母と

           麒麟の詠む妻の句はいい。たぶん、妻を詠む彼のまなざしがいいのだと思う。
           私は世の中の詩歌の中で夫が妻を、妻が夫を詠む際に多くみられる、過剰にべたついたりもたれ合ったり、何かを期待する姿勢を情愛と勘違いして陶酔している態度が非常に嫌いなのだが、麒麟の句にはそういう態度がさほど見られない。
           なんというか、何か美味しいものが目の前にあれば分け合って食べ、美しいものが現れれば共に眺め、妻にそれ以上のことを求めていないのだ。
           毎日の暮らしの中では何かを期待せざるを得ないからこそ、せめて詩歌の世界では、配偶者には何も期待せずにただ共に在りたい。
           夏蝶の句を〈妻とその母と遊ぶや夏の蝶〉と試しに変えてみたら夏蝶も妻もその母も、存在感が一気に平板になり凡庸な句になって非常に面白かった。

            少し待つ秋の日傘を預かりて
           
           この句にも妻らしき、近しい異性の気配が濃厚だ。一番使われる季節である夏でも、春日傘でもない、秋の日傘を預かっているというところに、預けたものと預けられたもの、ふたりの歳月がにじむ。人によっては手持ち無沙汰としか思えない時間を麒麟は、「少し」というありふれた言葉を使ってなんとも豊かに詠む。

            向き合つてけふの食事や小鳥来る
            目が回るほどに大きな黄菊かな
            呉れるなら猫の写真と冷の酒

           麒麟の句を読んでいて不安になることがあまりない。なんとも平和なのだ。今日の食事を向かい合ってとる一家(お、ここにも分け合う存在としての妻の気配)、「目が回るほど大きい」なんていう比喩の大いなるバカバカしさ、猫の写真と冷酒って何やら昔の文士気取りではないか、などなど。そういえば、麒麟は昔のものが好きである。

            俊成は好きな翁や夕焚火

           何かへの好き嫌いを語る時、麒麟は「僕は(それが)好き」と「は」に割と力を込めて言う。この句の「は」にも、その強さの片鱗がある。愛をシンプルに語ることの伸びやかさと、夕暮れ時の焚火の優しい炎。

            梨食うて夜空を広く思ひけり

           梨の句でこういう視点の句はあまりないように思う。すずしい食感が夜空を押し広げていくような、彼の句では珍しいファンタジックな発想が楽しい。

           …とまあ、好きな句についてまずは語ってみたが、この「思ひ出帳」150句に対して疑問点もある。大塚凱も指摘していたが、同一単語のリフレインの句が多く見られ、句群そのものをやや単調に見せている。大塚が指摘していない句にもリフレインを使用したものがあり、いくらなんでもちょっと多いなあと思う。表現の引き出しが少ない作家ではないはずだが、やや提出を焦ったのかなとも邪推してしまう。
           あと、「こういう句を面白いと思うの?残念だな、ちょっとビールでも飲みながらゆっくり話し合おうか?」という気持ちになる句もあった。

            初恋の人が来てゐる初詣

           「ありふれたノスタルジーをちょっとずらすのが西村麒麟なんじゃないのか!! これじゃまんまベッタベタド直球ノスタルジーじゃないか!!! コラー!!!!」という気分になった。
           そういえば、何句か金魚にまつわる句があり、妻の句と同じくらいあるな、と印象に残った。恋愛めいた感情の揺らぎと喪失感が句群にアクセントをもたらしていて、ちょっとにやにやしてしまった。 

            妻留守の半日ほどや金魚玉
            秋の金魚秋の目高とゐたりけり
            少しづつ人を愛する金魚かな
            墓石は金魚の墓に重からん
            金魚死後だらだらとある暑さかな


          【平成俳壇アンケート 第12回】堀本 吟

          ■堀本 吟

          1.回答者のお名前(堀本 吟

          2.平成俳句について

          ①平成を代表する1句をお示しください

          被災地とおなじ春寒いや違ふ 仲 寒蟬
                   『巨石文明』角川21世紀俳句叢書・平成26年1月15日
           
          ②平成を代表する俳人をお書きください。判断が難しいので2つに分けて結構です。

          ➊大家・中堅
          故和田悟朗 今いる場所を「地球」とみなし、そこから宇宙へと想像力の振幅たしかめている。そのような思考を俳句表現の領域とした。
          ➋新人(関悦史—言葉が世界を創ることを信じ、あらかじめ想像上の無国籍の壁をたてて、そこを往還する。間取りが広いゆえに上記の大家と同様必ずしも上手くない。が、それで良い。

          ③平成を代表する句集・著作をお書きください。

          関悦史評論集『俳句という他界』邑書林

          ④平成を代表する雑誌をお示しください。(「俳句空間—豈」と「俳句新空間」

          ⑤平成俳句のいちばん記憶に残る事件を示してください。

          攝津幸彦の死—非政治の位置から今日的課題を詠い上げることに絶妙な技術を見せた

          ⑥比較のために、俳句と関係のない大事件を示してください。

           (天災と人災の避けがたい交通を示した、津波およびそれを原因とする福島原発事故

          3.俳句一般

          ①時代を問わず最も好きな俳人を上げてください。(故津田清子

          ②時代を問わず最も好きな俳句を示してください。

          砂漠の木百里四方に友はなし 津田清子『無方』

          4.その他(自由に、平成俳壇について感想をお書きください)

          一挙にあげるわけにはゆかないので、一項目だけ書く事にする。

          ★ 短詩型文学にあっても、国境、時間、季節 言語の世界のバリアフリーを想像力によって実現し、その位置から「固有」の大事さをしめす、往還自在の道を開いて欲しい。

             昭和衰へ馬の音する夕べかな      三橋敏雄
               『真神』 昭和48年 端渓社
             湯豆腐よ昭和もすでに過去のごと
             長き昭和にあきて又もやぞうに喰ふ
             高価数の子長き昭和にあきあきす   波止影夫
               『波止影夫全句集』昭和57年6月15日、文琳社

           三橋敏雄とっては、昭和という時代は、自分の作家成立の起点、青春の昂揚感の時代として受け止められたのではないだろうか。多くの場合おめでたいハレの意味を含む漢字が使われるので、掲出の句のように、内容とのギャップが逆に成功している、このように日本人には元号的発想が染み付いてきている。
           波止影夫の掲出句は、昭和五十二。三、四、五年のいずれかの正月の句、我々が戦後七十年というときに同じような「飽き飽きした」感想を持つと同様に、昭和五十年代に早くもこのような感想を述べた俳人もいた。これらの俳句は、西暦年ではなく元号思考法が生理のように染み付いた者にしか絶対に書けない。
           「昭和」という不可思議な年号が戦後もつづいていて、途中から神が人になったことに日本国民として納得を迫られる。新興俳句のパイオニアであり京大俳句事件をくぐったこの俳人は、その問題を昭和後半(一九七〇年代後半)の四十年閒に突きつけられてきたのである。このような傾向はきっと波止影夫のみではないだろう。

          ★ だから、いま、磐井さんが「西暦年号」ではなく「平成」「昭和」という「元号」、そして「俳句空間」とか、「俳句世界」ではなく「俳壇」・・、とくくったことについても、便宜的な意味としては、わかるのである。私だって、その瞬間に、この言い方のほうがいいのではないか、というような追認をしたくなるぐらいだ。
           しかし、この時代の途中から、神から人への役割の変質をきたした昭和の天皇の複雑な役割とは違う意味の厄介さがともなうのが、最初から「象徴」であった平成の天皇の元号である。「象徴」という地位は神よりももっと抽象的な理解のむづかしい概念だ、どのようにして平成という時代の文化的な本質に迫りうるのだろうか?そういう位置を得て、役割を課せられた。「平成」が、生理とならないうえに、まだ本体が亡くならないうちに、変わるというのは、やっぱりなにか落ち着かない。ましてそれを俳句史の時代区分の原理に考えてしまうことは、俳句論や俳句史に関する大事な視点を落としてしまうようにも思う。
           俳句人があえて言う時には、歳時記が与える固定観念と同様に、こういうナショナルな元号のくくりかたが俳句史の区分に影響することにもなるので、ここで、早くも伝統の継承、世代交代のスタイルが出来てしまうのである。無批判追随であるとともに、思考内部に撞着を引き起こす。この辺の思考法の固定化は、俳句史の方法を考える場合には、かなり怖いところである。

          ★ 今一句、元号を使用して、私にはさもあるべし、と納得できる俳句を挙げておく。

            阿部定に時雨はなやぐ昭和かな  筑紫磐井

           この句は、「昭和」という時代とその時期の一事件(昭和十一年)を、風俗であるとともに当時の集合的な時代精神のブラックホールを象徴的に捉えたものである。これは、戦前の「昭和」について「平成」に詠んだからこそ成立した俳句である。
           懐古的な詩として美しく、また、一種の美として現代に引っ張ってき言葉の牽引力を見せる。この句が象徴的だという意味は、阿部定は、まさに、権力(男性)の喩であるところの根源的な一本を切り取って、微笑して逮捕されたからである。
           同時代の歌人が、既に、この事件に目を止めている。

            阿部定の切り取りしものの調書をば見るべくもなし常の市民我は
            おこなひの変態を知らぬげに彼女静かにわらひて立てり   齋藤茂吉『朝の蛍』
             (るび、変態→ ヘルベルヂオ)

           記憶が薄れて、間違っているかもしれないが、だいたいこういう茂吉の短歌である。
           大正後半から昭和初期へわたる文化風潮がいわゆる「モダニズム」のそれであった。時代の不調和を予感して、暗く派手派手しくひらいた世相の内実を、汲み取っている。

          ★ 等々、私にとっては「俳句の時空間」は「俳壇」のことではない。また、「明治、大正、昭和、平成」、そして来るべき「新元号」は決して、自分の創作の存念を投じる時代的な規定ではない。区分は重要な精神的転換をすくい上げる言葉でなければならない。
           このへんのズレをするどく意識させてくれる議論と実作品が欲しいものである。
           また、こういうふうに、定形の呪縛を無化してゆく言葉の流れを期待したい。
           その結節点をどのようにしめすのか?私は、一度、「列島大災害起源元年」というように考えたことがある。とくにつよく主張しようとも思わぬが、「災害」を中心に見るのもひとつの尺度ではあろう。
           今回、予測される天皇退位と改元こそは、「平成」という歴史的元号が、この間におきた事件を絡み合って、反語として詠まれ読まれる、そういう俳句の時代をも予測させる。(吟)