2016年4月22日金曜日

第41号 

平成28年熊本地震の影響により被災された皆さまに、お見舞い申し上げます。
被災地の一日も早い復興を、心よりお祈り申し上げます。
*****

-豈創刊35周年記念-  第3回攝津幸彦記念賞発表
※受賞作品及び佳作は、「豈」第59号に、作品及び選評を含め発表予定
各賞発表プレスリリース  募集詳細
攝津幸彦賞(関悦史 生駒大祐 「甍」
筑紫磐井奨励賞          生駒大祐「甍」
大井恒行奨励賞  夏木久「呟きTwitterクロニクル」

●更新スケジュール第40号4月1日第41号4月22日第42号5月6日


平成二十八年 俳句帖毎金00:00更新予定) 
》読む

※卒業を詠む!
(4/29更新)卒業帖第五小沢麻結・堀本 吟

(4/22更新)卒業帖第四網野月を・浅沼 璞・石童庵
(4/15更新)卒業帖第三真崎一恵・とこうわらび
曾根 毅・前北かおる
(4/8更新)卒業帖第二川嶋ぱんだ・天野大
(4/1更新)卒業帖第一杉山久子


(4/29更新)春興帖、第七下坂速穂・岬光世
依光正樹・依光陽子

(4/22更新)春興帖、第六ふけとしこ・望月士郎・佐藤りえ・真矢ひろみ
(4/15更新)春興帖、第五もてきまり・青木百舌鳥・林雅樹・早瀬恵子
(4/8更新)春興帖、第四前北かおる・神谷波・網野月を
(4/1更新)春興帖、第三内村恭子・小野裕三
(3/25更新)春興帖、第二曾根 毅・木村オサム・渡邉美保
(3/18更新)春興帖、第一仙田洋子・仲田陽子・杉山久子

【連載】  

いよいよ最終回! 
曾根毅『花修』を読む毎金00:00更新予定) 
  …筑紫磐井 》読む 
評者を読む … 曾根 毅  》読む 

ご寄稿いただいた方々 

♯ 1   ー事象の裏側への肉迫―  …寺田人  》読む
♯2   ‐超現代アニメ的技巧‐   …川嶋ぱんだ 》読む
♯3 行進する世界  …小鳥遊栄樹  》読む
♯4 「この世」の身体によって 『花修』覚書  …岡村知昭 》読む
♯5 ネガの貫之   …  橋本小たか 》読む
♯6  『花修』のありか …  青木亮人 》読む
♯7   眩暈  …   藤井あかり  》読む
♯8   セシウムに、露草 … 天野慶  》読む
♯9   つぶやき、あるいは囁き … 安岡麻佑  》読む
♯10   『花修』立体花伝 ―21世紀の運歩―   …男波弘志  》読む

♯11   水のように  … 藤田亜未  》読む
♯12   花は笑う  … 丑丸敬史  》読む
♯13   震災詠は苦手だった … 大池莉奈  》読む
♯14   推敲というプロセス … 中村安伸  》読む
♯15   見えざるもの …  淺津大雅 》読む
♯16   曾根毅という男 … 三木基史  》読む
♯17   おでんの卵 … 工藤 惠  》読む
♯18   思索と詩作のスパイラルアップ … 堺谷真人 》読む
♯19   彼の眼、彼の世界 … 仮屋賢一 》読む
♯20   きれいにおそろしい … 堀田季何  》読む

♯21   たどたどしく話すこと … 堀下翔  》読む
♯22   墓のある景色 … 岡田一実  》読む
♯23   永久らしさ  … 佐藤文香   》読む
♯24   続〈真の「写生」〉  … 五島高資  》読む
♯25    「対立の魅力」 …  野住朋可  》読む
♯26    「花修」雑感  …  杉山 久子  》読む 
♯27   贈られた花束 … 若狭昭宏  》読む
♯28   終末の後に   … 小林かんな  》読む
♯29   たよりにしながら …  宮﨑莉々香  》読む
♯30   飲むしかない   … 宮本佳世乃  》読む

♯31   極めて個人的な曾根毅様へのメール  … 家藤正人  》読む
♯32   二度目の日常 … 田島健一  》読む
♯33    現状と心との距離感 … 山下舞子  》読む
♯34   ソリッドステートリレー … 橋本 直  》読む
♯35    還元/換言   …    久留島元  》読む
♯36   虚の中にこそ  … キム・チャンヒ  》読む
♯37   絶景の絶景 …  黒岩徳将  》読む
♯38   変遷の果てとこれから … 宇田川寛之  》読む
♯39   凶暴とセシウム  ・・・    佐々木貴子 》読む
♯40   曾根毅句集『花修』を読む  … わたなべじゅんこ  》読む  

♯ 41   2016年2月、福岡逆立ち歩きの記―鞄の中に『花修』を入れて― … 灯馬  》読む
♯ 42  世界の行進を見る目 … 大城戸ハルミ  》読む
♯43 『花修』の植物と時間 … 瀬越悠矢  》読む
#44  伝播するもの  … 近 恵  》読む
♯45 まぶしい闇 … 矢野公雄 》読む
♯46  Giant Steps … 九堂夜想  》読む
♯47  夜の端居  …  西村麒麟  》読む
♯48  得体のしれないもの … 山岸由佳  》読む
♯49  残るのか、残すのか … 表健太郎 》読む
♯50 最後の弟子―『花修』をめぐる鈴木六林男と曾根毅 ・・・ 田中亜美 》読む
♯51  「花修」を読む(「びーぐる」30号より転載)  … 竹岡一郎  》読む
♯別枠<およそ日刊俳句新空間>人外句境 38 [曾根毅] … 佐藤りえ 》読む


            【抜粋広告・対談・書簡・エッセイ】


            • 抜粋「海程」編集後記〈金子兜太「白寿で海程主宰を辞する」〉  》見る


            • エッセイ 角川「俳句」5月号人物大特集<飯田蛇笏>に寄せて

            ―虚子は戦後の蛇笏をどう読んだのか―  筑紫磐井  》見る


            • 抜粋「俳誌要覧2015」(東京四季出版・2016.3刊)〈俳誌回顧2015〉より
            筑紫磐井×中西夕紀×田島健一による鼎談 コンテンツ 》読む

            ①「クプラス」評抄録  》見る
            ②「評論」「俳句」  》見る


            • 抜粋「俳句四季」5月号
            <俳壇観測第160回・深化する俳人とは?―少し変わったキャリアの持ち主たち> 筑紫磐井       》見る


            <座談会・最近の名句集を探る>より推奨句  》見る



            •  字余りを通じて、日本の中心で俳句を叫ぶ
            中西夕紀×筑紫磐井  今までのの掲載は、こちら 
            •  評論・批評・時評とは何か?
             …堀下翔×筑紫磐井 今までの掲載はこちら
            • 芸術から俳句
            仮屋賢一×筑紫磐井  今までのの掲載は、こちら



            およそ日刊俳句空間  》読む
              …(主な執筆者)竹岡一郎・青山茂根・今泉礼奈・佐藤りえ・依光陽子・黒岩徳将・仮屋賢一・北川美美・大塚凱・宮﨑莉々香・柳本々々 … 
              •  4月の執筆者 (柳本々々、佐藤りえ、北川美美…and more. ) 
               大井恒行の日々彼是(俳句にまつわる日々のこと)  》読む 



              【鑑賞・時評・エッセイ】
                朝日俳壇鑑賞】 ~登頂回望~ (百十一~百十三)
              …網野月を  》読む 
              【短詩時評 17○】歌集の冒険
              中家菜津子歌集『うずく、まる』批評会レポート@中野サンプラザ- 
              … 柳本々々   》読む
               【詩客】 短歌時評   …》読む 
              ・ 【詩客】  俳句時評    …》読む
               【詩客】  自由詩時評    …》読む 





                  【アーカイブコーナー】

                  new! 川名大論争 アーカイブversion1  》読む

                  週刊俳句『新撰21』『超新撰21』『俳コレ』総括座談会再読する 》読む



                      あとがき  読む


                      【PR】


                      2016年版<俳誌要覧・東京四季出版>の<俳誌回顧2015>
                      筑紫磐井×中西夕紀×田島健一による鼎談 コンテンツ 》読む










                      冊子「俳句新空間」第5号発刊!(2016.02)
                      筑紫磐井「俳壇観測」連載執筆
                      「最近の名句集を探る」












                      特集:「金子兜太という表現者」
                      執筆:安西篤、池田澄子、岸本直毅、田中亜美、筑紫磐井
                      、対馬康子、冨田拓也、西池冬扇、坊城俊樹、柳生正名、
                      連載:三橋敏雄 「眞神」考 北川美美


                      特集:「突撃する<ナニコレ俳句>の旗手」
                      執筆:岸本尚毅、奥坂まや、筑紫磐井、大井恒行、坊城俊樹、宮崎斗士
                        


                      特集:筑紫磐井著-戦後俳句の探求-<辞の詩学と詞の詩学>」を読んで」
                      執筆:関悦史、田中亜美、井上康明、仁平勝、高柳克弘

                      筑紫磐井著!-戦後俳句の探求
                      <辞の詩学と詞の詩学>

                      お求めは(株)ウエップ あるいはAmazonにて。

                      第41号 あとがき

                      (2016.04.24更新)

                      平成28年4月14日15日16日と熊本県地方を中心とした地域に大きな地震がありました。
                      被災された皆さまに、お見舞い申し上げます。現在も余震が続き、予断を許さない状況であることが報道されておりますが、被災された皆さまの安全と被災地の一日も早い復興を、心よりお祈り申し上げます。

                      今後の災害のために、災害時のインターネット/SNSの活用を確認しておく必要がありそうです。お役にたつかもしれない情報をいくつかまとめてみました。

                      ▶【防災/BOSAI】 災害時のインターネット/SNSの活用情報 》見る


                      *****

                      さて、41号。
                      曾根毅第一句集<『花修』を読む>が最終回を迎えました。作者である曾根毅さんご本人によるエッセイで締めくくりです。多くの皆様にご寄稿いただき誠にありがとうございました。

                      つづいて…
                      前号で<俳誌要覧2016>についての広告を掲載したところ、予想を超える反響がありました。誌面からの写真転載と鼎談でのウィットな会話が効いたのでしょうか…。この記事は、売上貢献が目的ではなく、今までと異なる記事掲載を目指してみようという試みです。今号より筑紫相談役のピックアップ記事掲載を開始しました。

                      毎号ご寄稿いただいております【短詩時評】の柳本々々さんの記事が、詩型を超えた多くの皆様にご覧いただいております。短詩についての考察、積極的なその行動力に毎回驚くばかりです。

                      ***

                      4月10日に筑紫氏、大井氏と打ち合わせのため上京。 場所は西荻のレトロな喫茶店でした。

                      西荻といえば…、山本紫黄とのエピソードで思い出すことなど。

                      10年ほど前の雪の日、新宿での水明の山本紫黄の指導句会の二次会の後、膳一郎さんという紫黄と同世代の方の様子がいつもと違ったため西荻のご子息のお店まで紫黄とともにお送りしたことがあり、紫黄は、その店でさらに飲む気満々。そこに、別の団体がいらして…、紫黄が大憤慨!ということがあり、さらに翌日、膳一郎さんが入院…という顛末付でした。そんなひと昔前を思いつつ、また俳句繋がりな日を同じ西荻で迎えるとは…と因果を思いました。 


                      ***

                      プリンス急逝に合掌。弥勒菩薩半跏思惟像を思わせる存在感に魅了されました。
                      ”かつてプリンスと呼ばれたアーティスト(the Artist Formerly Known As Prince)”と呼ばれての復活に驚き、”かつてXXXX”という表現が非常にツボにきたことを思い出し、、、久々、バイオグラフィを読んでみたい人です…。

                      ・・・・と個人的なことなどもろもろになりましたが、今回も無事更新。

                      ***

                      コンテンツ満載! どうぞお楽しみください。


                      【防災/BOSAI】 災害時のインターネット/SNSの活用についての情報


                      災害のために、災害時のインターネット/SNSの活用、お役にたつかもしれない情報を下記にまとめてみました。


                      ★音声電話による災害伝言ダイヤル「171」
                      https://www.ntt-west.co.jp/dengon/way/index.html

                      ★文字による災害伝言板
                      携帯各社のサイトから災害伝言板へ

                      ・NTTドコモ
                      https://www.nttdocomo.co.jp/

                      ・au
                      http://www.au.kddi.com/
                      ・ソフトバンク
                      http://www.softbank.jp/mobile/

                      ★安否情報をネットで登録:「Googleパーソンファインダー」
                      http://www.google.org/crisisresponse/japan/personfinder?hl=ja

                      ★「Facebook災害時情報センター」
                      https://www.facebook.com/safetycheck/kumamoto-prefecture-earthquake-apr14-2016/

                      ★トヨタ「通れた道マップ」
                      https://www.toyota.co.jp/jpn/auto/passable_route/map/

                      ★ニュース報道の再放送

                      ・Abema TV
                      https://abema.tv/

                      ・NHK NEWS WEB
                      http://www3.nhk.or.jp/news/live/

                      ・radikoテレビ・ラジオの再配信
                      http://radiko.jp/

                      ・ホウドウキョク
                      http://www.houdoukyoku.jp/pc/


                      ★被災地での無料WiFi(00000JAPAN)
                      http://www.wlan-business.org/customer/introduction/feature/00000japan

                      ★避難所マップ
                      http://crisis.yahoo.co.jp/shelter/map/



                      ◎その他
                      ▼ LINE、Twitter……覚えておきたい災害時の連絡手段 (AllAboutより)
                      http://allabout.co.jp/matome/cl000000002572/

                      ▼ 災害時に役立つLINEの活用方法 (LINE公式ブログより)
                      http://official-blog.line.me/ja/archives/54801265.html

                      ▼AmazonのたすけあおうNippon
                      http://www.amazon.co.jp/b/ref=s9_acss_bw_ln_food_1_1?_encoding=UTF8&ie=UTF8&node=3654884051&pf_rd_m=AN1VRQENFRJN5&pf_rd_s=merchandised-search-leftnav&pf_rd_r=0J38CF6FDPQ32C6DDECA&pf_rd_t=101&pf_rd_p=313521469&pf_rd_i=4422892051


                      ▼Amazon 被災地を応援 ほしいものリスト
                      Amazonサイトから(被災地からの要請により、ほしい物リストを使って必要な物資をお届けするサポートを行っています。ヤマト運輸株式会社のご協力により、各避難所まで漸次配送いたします。)

                      熊本地震 被災地を応援 ほしいものリスト
                      http://www.amazon.co.jp/b?node=4422892051


                      http://www.amazon.co.jp/b/ref=s9_acss_bw_ln_food_1_2?_encoding=UTF8&ie=UTF8&node=4422892051&pf_rd_m=AN1VRQENFRJN5&pf_rd_s=merchandised-search-leftnav&pf_rd_r=0ZGF6662S5JA5PFQBGFF&pf_rd_t=101&pf_rd_p=313521329&pf_rd_i=3654884051


                      ツイッターでの情報源
                      ▼ 災害・危機管理情報(首相官邸)
                      https://twitter.com/Kantei_Saigai

                      ▼ 内閣府防災
                      https://twitter.com/CAO_BOUSAI

                      ▼ 気象庁
                      https://twitter.com/JMA_kishou

                      ▼ 地震情報(日本気象協会)
                      https://twitter.com/tenkijp_jishin

                      ▼ 総務省消防庁
                      https://twitter.com/FDMA_JAPAN

                      ▼ 防衛省
                      https://twitter.com/bouei_saigai

                      ▼ 陸上自衛隊
                      https://twitter.com/JGSDF_pr

                      ▼ 日本赤十字社
                      https://twitter.com/JRCS_PR

                      ▼ NHK生活・防災
                      https://twitter.com/nhk_seikatsu



                      【短詩時評 17○】歌集の冒険-中家菜津子歌集『うずく、まる』批評会レポート@中野サンプラザ-  柳本々々




                        うずく、まるわたしはあらゆるまるになる月のひかりの信号機前  中家菜津子
                        (中家菜津子『うずく、まる』書肆侃侃房、2015年)

                       二三分して、細君は障子の硝子(ガラス)の所へ顔を寄せて、縁側に寝ている夫の姿を覗いて見た。夫はどう云う了見か両膝を曲げて海老のように窮屈になっている。そうして両手を組み合わして、その中へ黒い頭を突っ込んでいるから、肱に挟まれて顔がちっとも見えない。
                        (夏目漱石『門』1910年)

                       エストラゴンは、坐って、靴を脱ごうとする。しかしじきにあきらめ、からだを丸めて、頭を両足のあいだにつっこみ、両手を頭の前で組む。
                        (ベケット、安堂信也・高橋康也訳『ゴドーを待ちながら』白水社、1990年)


                      先日、2016年4月17日に中野サンプラザで行われた「中家菜津子歌集『うずく、まる』批評会」に参加してきました。第1部は「野村喜和夫さんに聞く 詩型は越えられるか」という野村喜和夫さんに加藤治郎さんがお話を聞く形の短歌と詩の接点や境界をめぐる対談、第2部は「パネルディスカッション『うずく、まる』をめぐって」司会は中島裕介さん、パネラーに石川美南さん、遠藤由季さん、染野太朗さん、藪内亮輔さんが登壇されそれぞれの立場から歌集の分析とディスカッションが行われました。

                      その批評会のなかでパネラーの方々のお話をききながらずっと考えていたのが、〈うずくまる〉身体のバランスとアンバランスだったんです(ちなみにこの「アンバランス」というのは当日のひとつの鍵語にもなっていました)。

                      うずくまる、って自分でしてみるとわかるんだけれど、〈へん〉なんですよね。なにか、バランスがよくて、かつ、アンバランスなんです。たとえばうずくまってみるとうまくうずくまれなかったりして〈ぐらぐら〉したりしますよね。妙にアンバランスで体勢維持がなかなか難しい。どうも本来的な姿勢ではない。ふだんナチュラルにしているようなデフォルトの体勢ではないんです。けれどもその一方で、おそらくわたしたちが胎児の頃にずっとうずくまる姿勢をとっていたことからもわかるように、どこかでなにかに包まれているような、あたたかい〈母胎回帰〉的な姿勢でもあるように思うんです。つまり異様にバランスの取れた姿勢。その極端なバランスとアンバランスのはざかいにあるのが〈うずくまる〉身体なのではないかと。

                      で、なんでこんなことを考えていたかというと、当日の批評会で(私が感じた)主なキーワードとしてあがっていたことばが二つあったんです。

                      それは、〈自走性〉と〈ステレオタイプ〉です。

                      〈自走性〉っていうのは、わたしの意図や意志をこえて言葉が勝手に走っていく感じで、たとえば上の中家さんの歌なら、「まる/ゆる/まる/なる」と〈音〉が歌のベクトルを引っ張っていく部分があるわけです。意味ではなくて。言葉が〈自〉分で〈走〉っていく〈性〉質を帯びている。これが〈自走性〉です。

                      〈ステレオタイプ〉というのは、決まりきったイメージのことです。ああこれよくみたことあるよね、というのがステレオタイプ。テンプレートという言い方もされていました。たとえばこんなふうな女性の描き方はステレオタイプじゃないかという使い方がされます。

                      で、ちょっと不思議だったのがこの〈自走性〉と〈ステレオタイプ〉って実は相反するものなんじゃないかと言うことなんです。〈自走性〉っていうのはわたしの意図や意志やイメージをこえて言葉の音律によって勝手に言葉が言葉によって引きずりまわされていくことですから、ステレオタイプのイメージをはみ出していくはずなんです。ところがこの歌集にはそうした〈自走性〉がある一方で、〈ステレオタイプ〉のイメージを感じさせる部分がある。これがとても不思議だなあと思いながら、お話を聞いていたんです。なんだろうこれは、と。

                      で、この〈自走性〉と〈ステレオタイプ〉のバランス/アンバランスのありようって〈うずくまる身体〉そのものでもあるんじゃないかと思ったんです。なにか極端に相反するベクトルがあって、で、それを統合できないかたちで、不穏なかたちでパッケージングしているのが〈うずくまる〉という様式なのではないかと。それはバランスとアンバランスに、ステレオタイプと自走性をつねに包含しつつ、引き裂かれている。うずくまる身体のぐらぐらしている感じと、そうでありながらも超越的ななにかに包まれ還っている感じ。

                      つまりそれってなにかというと歌集としての〈全体性〉によってはじめて到達できている〈全体性〉としての〈相反したイメージ〉だとおもうんですよ。歌の一首単位では浮かび上がってこないものが、歌集というパッケージングによってうずを巻きながら浮かび上がってきた。短歌一首一首だと出てこない働きのようなものが歌集単位として、〈全体性〉としてみるとなんだかふしぎな感じで現出してきた。

                      それはこう言い換えてもいいかもしれない。

                      歌集をつくるということは、どういうことなのか?

                      今回の批評会の第1部で野村喜和夫さんと加藤治郎さんのおふたりがおっしゃっていたことに〈詩集をつくること自体は創作そのものである〉という言葉があったんです。それは〈あるひとつのコンセプトを提出するものである〉と。なにかそこには一首や一句をこえた〈創作行為〉がでてくるっていうことです。そしてもしかしたらそれはときに書き手や語り手の思惑をこえてあらわれることもあるかもしれない。たとえば未来の読者がそのコンセプトをひっぱりだしたりするかもしれない。

                      野村さんと加藤さんの対談をきいていたときに私は思ったんですが、歌集や句集、詩集というのはひとつの〈全体性の希求〉なんですね。それまで一首単位や一句単位ではわいてこなかったものが〈全体性への希求〉によって出てくる。それを書き手や読み手は、歌集・句集・詩集としての全体的なパッケージングとして受け取る部分がある。

                      つまりそれってなんなのかというと、〈場所が与えられる〉ということなんではないかと思うんです。

                      わたしたちはなぜ歌集/句集/詩集を読むのかというとそれは〈場所を受け取る〉ためではないかと。その書き手/語り手のいようとする/いてしまった〈場所〉を考えるためではないかと。わたしたち自身もその〈場所〉へとダイヴしながら。決して場所化できない場所を〈共に〉かんがえること。トポスとしてのうずに巻き込まれること。それが歌集を読むことじゃないかと。

                      その意味で示唆的だったのが、当日パネラーだった藪内亮輔さんのレジュメだったんです。藪内さんのレジュメの引用歌の組立方が、歌集に掲載されている順番通りにそのままレジュメに歌を並べ、構成し、配置し、テーマ分割し、再組織化していくというふうにつくられたレジュメだったんですね。

                      つまり、藪内さんは自らの枠組みは用意しながらも、読者が歌集をはじめから終わりまでページをめくりながら読んでいくように、それをたどり、追体験するように、レジュメを構成していった。それは藪内さんがこの歌集にひとりの〈渦のなかに入った読者〉として〈場所を与える〉という行為だったと思うんですよ。そしてそのことによって〈場所を与える、ことを考える〉契機がうまれる。

                      そのとき私は、ああ歌集を読むっていうのはそういう自らの場所性と歌集の場所性が接近し、ずれ、不穏なうずを、らせんを、重なりを、つくっていくことかもしれないなと思ったんです。

                      歌集によって〈全体性〉は希求される。しかし、提出された〈全体性〉というのは、読む過程で〈未遂〉もしていく。それが読むことの生態的ダイナミズムです。そこには全体性が逸脱していくような〈不穏な全体性〉がでてくる。でもそのらせん的なズレによってこそ、わたしたちは歌集を読みながらその歌集を〈何度も〉生き直してゆくことができるのかなとも思うんです。

                      だから、わたしたちが歌集を旅するというのは、そういった〈不穏な渦(うず)〉に巻き込まれていくことなのかなと思うんです。それが今回の批評会をとおして、中家さんの歌集『うずく、まる』をとおして、わたしが、たぶん、到達した場所だったんです。

                      歌集とは、生きられる《うず》なんだ、と。


                       ばらばらになったあばらを海原にばらまけば
                       渦潮
                       しばらくは未来にしばられる
                       一度も晴れたことのない素晴らしい闇に浮かぶ
                       銀河
                       そのまばらに散った青い星の上に
                       荊の蔓を渡るバランスであなたは立っている
                       散緒(ばらお)が切れるまでのあいだ


                        (中家菜津子「散緒」『うずく、まる』書肆侃侃房、2015年)

                       【時壇】 登頂回望その百十一~百十三 /  網野月を


                      その百十一(朝日俳壇平成28年3月28日から)

                                                
                      ◆鉄橋に近き祖父の田たにし鳴く (嬉野市)秋山和江

                      大串章の選である。田螺が鳴くかどうかの議論は他に譲るとして、鉄橋の近くに祖父の田があるということのステュエーションがすなわち詩的内容を有しているようだ。鉄橋の竣工は何時頃の出来事であったのだろうか?「近き」の距離感はどれ程であろうか?詳しい時空間を言わずに済ませた句の世界観にこそ田螺は鳴けるものなのかも知れない。

                      ◆リヤカーに園児満載風光る (東京都)三輪憲

                      大串章の選である。「園児」は幼稚園児ではなくて保育園児であろう。この光景を筆者の住環境の中で、近頃よく見かける。年長の園児はロープを持って数珠繋ぎに行列して散歩を楽しんでいるのだが、何人かの年中年少の園児は大きめのカーゴに立って乗せられて、歩まないのだが同じく外歩きを楽しんでいるのだ。

                      時間持ちの園児らの無限の力に風は光を増している。

                      ◆笹鳴を聞かむと来れば初音かな (東かがわ市)桑島正樹

                      稲畑汀子の選である。評には「二句目。鶯の笹鳴を聞きに出掛けたつもりが、もう初音となった。作者の予想外の感動が伝わってくる。」と記されている。中七の「・・れば」から座五の「・・かな」は俳句作りの常套手段と言って良い構成を有している。それだけにこの俳句には新味が薄いのだが、笹鳴の期待値が初音に昇華した事実は評の言う通り、やはり「予想外の感動」なのである。
                      少々艶っぽい意にも解してしまうのは、鴬が伝統的に包含する下世話な意味の広がりがあるからかも知れない。

                      ◆山入れて春眠深き水たいら (飯塚市)古野道子

                      金子兜太の選である。筆者には難解な句であるが、それでも大変な魅力を感じないわけには行かない句である。座五の「水たいら」をどう読解するかなのだが、湖面もしくは水面が「たいら」と筆者は解した。湖面に映る山影は未だに冬からの深い眠りの中にある、ということかしら?上五の「山入れて」を山影を映してと読んだのであるが。


                      その百十二(朝日俳壇平成28年4月4日から)
                                               
                      ◆朝桜大東京に着任す (下関市)隅田雅子

                      大串章の選である。上五の「朝桜」を見た瞬間に作者は東京に着任したことを実感し、事実を受け容れたのである。転勤にはドラマがありそうなのであるが、それは言わないのだ。座五の「・・す」の終止形のすっきりした言い方から察すると何らかの心の透いた感がある。身の引き締まる思い、というやつではないだろうか。「朝桜」と対になって清潔さ漲る句である。

                      ◆淡雪や風ともなへば風に消ゆ (富士吉田市)小俣紀子

                      稲畑汀子の選である。評には「一句目。寒暖の差のはげしい春。時雨が雪になり淡雪となって消える。その変幻を楽しむ作者。」と記されている。もちろん風の中へ消えゆくのは淡雪なのであろうが、上五は「・・や」の切れ字になっているので、淡雪に他の何ものか、例えば作者自身の想いを投影しているようにも読める。切れ字「や」は効果が大であり、多様であるということか。

                      ◆妖精の白き踝青き踏む (西宮市)近藤六健

                      稲畑汀子の選である。幼児の野遊びの図であろうか。この「白き踝」をに繋がる足裏で「青き」は踏まれる草々である。踏む方も踏まれる方も柔かくて、この世に生まれ出てきたばかりのものたちである。正確には、踝は足の外側にあるので、直接に「青き」に触れることはないのだが、充分に句意は伝わってくる。

                      ◆山笑ふそんな気がして目が覚める (川崎市)池田功

                      金子兜太の選である。評には「池田氏。中七の思いつきが旨い。」と記されている。評の通り「そんな気がして」が不思議なロジックを醸し出している。「そんな気がし」ただけならば、山は笑っていないのである。つまりまだ山の木々は芽吹いていないのだ。が、上五の季題「山笑ふ」自体が擬人法であるので、もともと山は笑わないのだ。その点を逆手にとって、山は笑わないのだが、笑ったように感じられて・・、しかも夢見心地から醒めたというのである。
                       

                      その百十三(朝日俳壇平成28年4月10日から)
                                            

                      ◆動かねば万歩計ゼロ山笑ふ (熊本市)内藤悦子

                      稲畑汀子と大串章の共選である。俳句の諧謔性というような大きなテーマで云々する句ではないだろう。只々、面白いのである。笑っている山は「不動如山」である。

                      ◆一切が水の光や花の昼 (船橋市)斉木直哉

                      長谷川櫂の選である。評には「一席。この世の何もかも、水がきらめくように光っている。花の力。」と記されている。評にあるように「花の力」なのであるが、「花の力」の源は「水の力」ではないだろうか?上五中七の「一切が水の光や」の措辞からはそう読むことが出来るだろう。座五の「・・の昼」の解決は些か安易な気がする。

                      ◆われも独り彼も独りや西行忌 (二本松市)安齋くみ子

                      長谷川櫂の選である。評には「三席。「彼」は西行とも別の誰かととってもよい。さびしさに耐える人。」と記されている。評のように「彼」の存在の誰かということは読み手に任されていることであろう。ただ「独り」を「さびしさに耐える人」と読むかどうかは疑問である。西行にしてからが、「独り」故に「さびしさに耐え」ている人ではなかっただろうと筆者は考えている。

                      ◆チューリップ並びて風の並びけり (磐田市)谷公子

                      大串章の選である。評には「第三句。「風」が並ぶと言ったところが面白い。」と記されている。普段は目に見えない風をチューリップの戦ぎに確認したのである。チューリップが花壇に列をして植栽されているので、その列の並びから風も並ぶという表現が生まれたのである。座五の「けり」が効果大である。



                      (「朝日俳壇」の記事閲覧は有料コンテンツとなります。)

                      抜粋「俳句四季」5月号<俳壇観測連載第160回・深化する俳人とは?――少し変わったキャリアの持ち主たち> 筑紫磐井



                      ○藤野武『火蛾』(二〇一六年一月角川文化振興財団刊)

                      藤野は、昭和二二年東京生まれ、「山峡」で角川俳句賞受賞直後、第一句集『気流』を上梓、今回の『火蛾』は二〇年ぶりの第二句集に当たる(中略)兜太門らしさはやはりその激しさにある。社会性俳句らしい、東日本大震災を詠んだ句に明らかに表れているがここではそれをひとまずおいて、日常詠から抜いてみよう。

                      恋も習慣この間がくれに激しき月
                      初潮の子冬田に光の破片破片
                      嘔き気するほど路地明るくて夏は来ぬ

                      しかしとりわけ好感が持てるのは、老いて獲得した優しい眼差しである。角川俳句賞作家の深化とはこんな作品をいうのではなかろうか。

                      パンの香と淡雪の音妻の午後
                      菜の花よ生まれなかったもろもろよ
                      法師蟬生き急ぎたる君をふと

                      ○飯田冬眞『時効』(二〇一五年九月ふらんす堂刊)

                      角川書店「俳句」の編集長が退任後俳句を始めたと聞いた。(中略)恐らく俳句雑誌の編集部にいた人が、意識すると、しないとを問わず上から目線で見かねないのに対し、結社主宰者に弟子入りすることは勇気のいることであろう。編集長としてのかつての自分の見識が全否定される可能性もあるからだ。その意味で、飯田の句集は面白く読ませてもらった。

                      大朝寝遺影めきたる社員証
                      新樹光家族写真に知らぬ人
                      官邸を包み込みたる蟬時雨
                      母の日の母と遺影を撮りに行く
                      夏終るちつぽけな肉ぶら下げて
                      凩や死者も生者も海より来

                      これらに限ることは飯田の俳句世界を限定することになりそうだが、こうしたシニカルな作品は、「俳句」編集長以後結社でひたすら愚に徹して言葉の修練に励んだことにより生まれた深化であろう。


                      ※詳しくは「俳句四季」5月号をお読み下さい。
                      ※文章・俳句作品は一部抄録。

                      東京四季出版 「俳句四季」  






                      抜粋「俳句四季」5月号 <座談会・最近の名句集を探る>より推奨句



                      5月号は、齋藤愼爾×浅沼璞×大高翔×(司会)筑紫磐井による座談会である。
                      この座談会で取り上げられた作品を一部抄録する。

                      ○浅井愼平『哀しみを撃て』(二〇一五年一二月東京四季出版刊)

                      【推奨句】

                      二月尽く香水の名はエゴイスト
                      旅鞄重きは春の深さかな
                      鮟鱇の闇を切り裂く汽笛かな
                      サーカスのジン多染み入る夕日かな
                      冬近し汽車の音する印刷機
                      始めから陰はありけり人の春
                      きみの弾くショパンは昏しソーダ水 
                      紫陽花や鉄の匂いのする街に
                      降る雪や遠野の火事を告げられし
                      風花や燐寸するとき夜の雲

                      【問題句】
                      春愁や抱いてリルケの文庫本

                      ○坪内稔典『ヤツとオレ』(二〇一五年一一月角川文化振興財団刊)

                      【推奨句】

                      笹の葉のさらさら蠍座の音か
                      熊楠はすてきにくどい雲は秋
                      柿はみな尻から太る伊賀上野
                      希望とはたとえば秋の切り通し
                      木の櫂の匂いを放ち夏の兄
                      バイオリン弾くはずだった裸木たち
                      首都にいるカナリア何羽?春の雪
                      従順を拒む一頭夏の馬場
                      尼さんが五人一本ずつバナナ


                      ○稲畑廣太郎『玉箒』(二〇一六年一月ふらんす堂刊)

                      【推奨句】

                      アニミズムには朧夜がよく似合ふ
                      秋の蚊を払ふ越後美人の所作
                      春障子猫はだんだん人と化す
                      曲芸のやうな乗換へ山笑ふ
                      終戦の日の我が影の濃かりけり
                      子規虚子といふ冷やかな師弟かな
                      一片も散らぬ桜の疎ましく
                      黒く来て青く去りゆく揚羽蝶
                      落し文父の存問かもしれぬ
                      大雪崩とは人間の心にも
                      吾亦紅より吾亦紅までの距離
                      卯波寄す港イージス艦の黙
                      生身魂大和に乗つてゐたといふ
                      芦屋市に生まれて烏の子の運命
                      駅で買ひ宿に失せたる時雨傘

                      【物議のある句】

                      身に入みて未来を拓く覚悟かな

                      ※詳しくは「俳句四季」5月号をお読み下さい。
                       


                      東京四季出版 「俳句四季」  






                      抜粋「俳誌要覧2016」(東京四季出版・2016.3刊)〈俳誌回顧2015鼎談〉より② 「評論」「俳句」選



                      「俳誌要覧2015」の〈俳誌回顧2015〉筑紫磐井×中西夕紀×田島健一の対談は参加者としてもなかなか面白かった。ここにその一部を紹介する。ここでは、各人が取り上げた評論、俳句作品を示そう。


                      ―2015年の俳句結社誌・同人誌における注目のエッセイ・評論など3篇―

                      【筑紫磐井】

                      ○「地貌季語を求めて」小林貴子ほか(「岳」)  
                      ○「俳句私小説俳句論のゆくえ」堀切実(「汀」)  
                      ○「俳句実験室 寺山修司」澤田和弥(「若狭」)  

                      【中西夕紀】

                      ○「私たちの戦争の記憶」鈴木要一ほか(「滝」)
                      ○「『青春俳句』の系譜を継ぐ者」坂本登(「晶」) 
                      ○「曾良を尋ねて」乾佐知子 (「春耕」)

                      【田島健一】

                      ○「成分表」上田信治(「里」)
                      ○「俳人たちはどのように俳句を『書いて』きたか?」小野裕三(「豆の木」) 
                      ○「選と聖性」関悦史(「澤」) 

                      ―2015年の俳句結社誌・同人誌における注目の句10句―

                      【筑紫磐井】

                      アベ政治を許さない [金子兜太・澤地久枝?](件の会現場)

                         *    *

                      秋蝶のあとついてゆく眠くなる  鳥居三朗(「雲」⑩) 
                      行く春を大和の峠暗がりに  和田悟朗(「風来」20号) 
                      菜の花のひかりは雨となりにけり  澤田和弥(「若狭」⑦) 
                      またの世も師を追ふ秋の螢かな  三森鉄治(「郭公」⑫) 
                      帰り道金木犀を嗅ぎながら   飯田香乃(「朱夏」123号)

                         *    *

                      三月の風よ集まれ釘に疵 大本義幸(「俳句新空間」4号) 
                      人がゐて麦茶をいれてゐたりする  生駒大祐(「クプラス」2号) 
                      水性の町春服の乾きゆく  宮本佳世乃(「オルガン」1号) 
                      一本道ゆくやじりじり首焼けて  中西夕紀(「都市」⑧)


                      【中西夕紀】

                      顔映す泉の底に別の顔     仲寒蝉   「里」⑥ 
                      声あらばきつとハスキー豆の花 浅井陽子 「運河」⑧ 
                      見ゆる音聴こゆる光葦青し 南十二国 「鷹」⑧ 
                      蛾を打つて心鱗粉まみれなる 伊藤季実 「汀」⑨ 
                      薔薇赤し軍港として今も尚 田島照子 「夏潮」⑩ 
                      神々は寡黙なりけり雲の峰  山中多美子 「円座」⑩ 
                      しづけさのつれづれに蘆混み合へり 瀧澤和治 「今」秋 
                      青空は何もこぼさず蟻地獄  涼野海音 「火星」⑩ 
                      途中から目の裏側へ鳥渡る  柳正子 「小熊座」⑪ 
                      長き夜や明りを消してわれ消して  桑原三郎 「犀」202


                      【田島健一】

                      うららかに暮らした跡のあるほとり  鴇田智哉 「オルガン」1号 
                      六月に生まれて鈴をよく拾ふ  生駒大祐    「オルガン」2号 
                      ひまはりのすべてに布のかけらるる  宮本佳世乃 「豆の木」19号 
                      うるほへる下くちびるとアニメの火  佐藤文香 「クプラス」2号 
                      衣かつぎ百年前の雷を聞く  川口真理 「港」① 
                      何もない日の籐椅子に日が入る  田中惣一郎 「里」⑥ 
                      ふ、は鳥になり昆布干す人が仰ぐ  依光陽子  「クプラス」2号 
                      さえずりの空をつくりし会社かな こしのゆみこ 「豆の木」19号 
                      誰も知らない初雪のできる音 近恵    「豆の木」19号 
                      てのひらを片付けられずクリスマス  大石雄鬼  「豆の木」19号


                      ※詳しくは「俳誌要覧2015」をお読み下さい。


                      東京四季出版 「俳句四季」  






                      抜粋「俳誌要覧2016」(東京四季出版・2016.3刊)〈俳誌回顧2015〉より① 「クプラス」評抄録


                      (鼎談: 筑紫磐井×中西夕紀×田島健一 )

                      田島 今年はとくに雑誌の付録として平成二十六年俳諧國之概略」(以下、「俳諧國」)というかなりシニカルでマニアックな、俳壇の見取り図をつくっています。みんな考えることかもしれないんですけど、実際にそれをこれだけポップな感じで作った、いろんな批刊も含めてもっと話題になってもいいかなと思いました。

                      筑紫 書かれた人がみんな満足していないからじゃないの(笑)。

                        (中略)

                      田島 まあ俳句が全体としては「クブラス」のことはあまり語られなかったなと。若手のなかではけっこう話題になったんですけど。

                      筑紫 あまり話す機会がないですよね。じゃあ、この場で少し――あの、これ(「俳諧國」)をグランドデザインしたのは山田耕司さんでしょ。で彼は「ワタシなき合ワタシ性」という文章のなかで《伝統》対《前衛》というのはもう古いから三項対立だというふうに.言ってるけど、じつは二項対立を二階建てにすると三項対立になるじゃないですか――AかAじゃないか、BかBじゃないかをぐちゃっとくっつけると、AかつBか、Aだけか、Bだけかという。だから基本的には画期的なことを言ってるわけではなくて、二頂対立を積み重ねた感じがするんです。

                      ただ非常に見やすいことは見やすいんで、たとえば金子兜太と高柳重信派は在来から言われている二項対立ですね。ただいい加減なのは、たとえば澤好摩を高柳重信の代理だとしてみると、金子兜太が「ロマン主義」なのはまあいいかもしれないけど、えっ、高柳重信が「旧前術派」?これは怒るなあと(笑)。なんたって前術派はもともと金子兜太だったのになんでって。だから第二番目の階層の名称がかなり恣意的ですね。

                      たとえば石田郷子を「等身大派」といってるけれど、中西夕紀や仙田洋子は絶対「等身大派」じゃない。そもそも「等身大派」というのがよくわからない。石田郷子さんはどちらかというと細見綾子的な世界観がある人かなと思ってるんで、そう思ってみると中西さんや仙田さんはそこにはいる人たちじゃない。それの最たるものが「分からないとダメ派」(笑)。こんなのひどいなあと(笑)。

                      田島 これひどいんですよだから(笑)。

                      筑紫 基本の三角構造はいいんだけど、その次の第二階層がなんかまじめに議論する気がなくなっちゃうような名付け方じゃないかな。

                      田島 たとえば鴇田智哉さんとか安井浩司さんが同じ大きさの字で「原理主義」となってて、これなんかずいぶん話題になって。「原理主義」というとかなりインパクトのあることばなんですけど。だからこれはみんなにわかってもらおうというよりも、むしろみんなをいらだたせようという思惑があるんで。たぶんいろんな人がいらだったと思うんです(笑)。でもそのいらだちがあまり表而化しなかったなあというところが……。

                      筑紫 だから続くような議論になってないというところですね。「クプラス」の一号はなんの特集やったかというと長谷川櫂と夏石番矢ですよね。これはだれでもわかる二瑣対立ですよ。あれもいろいろ批判はあったみたいだけれど、引き継げる。ただ今回のはなかなかこれでまじめに評論書けないんじゃないかなと。

                      (中略)
                      筑紫 思ったのは、なんか有楽町のガード下でおじさんたちが酒飮みながら気炎をあげているような(笑)。座談会(「平成二十六年の俳句界をマッピッグしてみたらこんなことになった」)には女性いないもんね。まあ、第三号でどうなるか。

                      田島 いま言ったいらだちのようなものはスポンジのように吸収されて表面化しないわけで。これにもっときれきれに反応するようなのがあっても……それだったらお前がしろよって言われちゃうんで(笑)、言いにくいんですけど。

                      筑紫 私か思うに、「クプラス」と「オルガン」つてカタカナ四文字じゃない、どうみたって「オルガン」は対抗意欲もってるんじゃない? あんなのにまかせておけないということで創刊したんじゃないかと邪推しましたけど。

                      田島 いやいや、ぜんぜん違いますよ(笑)。メンバーは一部いっしょですし。自分たちがやろうとしてることは違います。

                      筑紫 これは人をいらだたせることを目的とした雑誌だけど(笑)、「オルガン」はそんなつもりはないでしよ。

                      田島 われわれもいら立ってほいしいというのはありますよ(笑)。暖簾に腕押しですけどね。


                      ※詳しくは「俳誌要覧2015」をお読み下さい。


                      東京四季出版 「俳句四季」  






                      抜粋「海程」編集後記〈金子兜太「白寿で海程主宰を辞する」〉


                      「対談・書簡」として連載を続けてきたが、次第に更新が間遠となったので、「抜粋広告・対談・書簡・エッセイ」という長い名前のコーナーに拡張してみた。「戦後俳句を読む」ではじめたBLOGがいつの間には「俳句新空間」に変わっていったように、日々深化発展しようという志である。題名は間口をこれくらい拡げておけば書けない記事はないからである。

                      第1番目の記事の冒頭なので、看板書きかえの趣旨を述べることにした。ただし第1号記事からして看板に偽りありで、枠外の記事である。現在180冊ほど雑誌の寄贈を受けているが、そうした中で結社の会員だけでなく、ふつうの俳人に関心の深い記事が時折あるので、紹介してみようと思った。なんとなく「噂の真相」に近いところもあるが、これはすべて事実である。時間的に雑誌より早いのが特徴だ。

                      多くは筑紫磐井が収集し独断と偏見で編集しているが、あえて筑紫執筆とか編集とか書くのもおこがましいので無署名となっている。  (筑紫磐井)


                      ○「海程」4月号編集後記

                      「海程」の内外で、〈近いうちに海程はなくなる〉という噂が流れているという。事の発端は、1月の東京例会で、金子主宰が「白寿で海程主宰を辞する」と述べた、新年の挨拶にあるらしい。金子主宰も誤った風評に驚いて、2月の例会では「白寿で主宰の座からは下りるが、海程は存続する」とのご意向を示すとともに、早とちりや誤解の元となるような情報は発しないよう注意があった。5月の全国大会では、海程の今後についての指針が示されると思うので、惑うことのないようにして欲しい。(武田伸一)

                      2016年4月1日金曜日

                      第40号

                      -豈創刊35周年記念-  第3回攝津幸彦記念賞発表
                      ※受賞作品及び佳作は、「豈」第59号に、作品及び選評を含めて発表の予定
                      各賞発表プレスリリース  募集詳細
                      攝津幸彦賞(関悦史 生駒大祐 「甍」
                      筑紫磐井奨励賞          生駒大祐「甍」
                      大井恒行奨励賞  夏木久「呟きTwitterクロニクル」
                      4月のスケジュールを下記の通り変更させて頂きます。
                      4月の更新第40号4月1日第41号4月15日第42号4月29日


                      ●更新スケジュール第40号4月1日第41号4月22日第42号5月6日


                      平成二十八年 俳句帖毎金00:00更新予定) 》読む

                      (4/15更新)春興帖番外・卒業帖第三真崎一恵・とこうわらび
                      曾根 毅・前北かおる
                      ※実際に卒業する人もそうでない人も…卒業を詠む!
                      (4/8更新)春興帖番外・卒業帖第二川嶋ぱんだ・天野大
                      (4/1更新)春興帖番外卒業帖第一杉山久子


                      (4/15更新)春興帖、第五もてきまり・青木百舌鳥
                      林雅樹・早瀬恵子 (4/8更新)春興帖、第四前北かおる・神谷波・網野月を
                      (4/1更新)春興帖、第三内村恭子・小野裕三
                      (3/25更新)春興帖、第二曾根 毅・木村オサム・渡邉美保
                      (3/18更新)春興帖、第一仙田洋子・仲田陽子・杉山久子



                      【毎金連載】  

                      曾根毅『花修』を読む毎金00:00更新予定) 》読む  
                        …筑紫磐井 》読む

                      曾根毅『花修』を読む インデックス 》読む

                      • ♯49  残るのか、残すのか … 表健太郎 》読む
                      • ♯50 最後の弟子―『花修』をめぐる鈴木六林男と曾根毅 ・・・ 田中亜美 》読む
                      • ♯51 「花修」を読む(「びーぐる」30号より転載)  … 竹岡一郎  》読む

                                【対談・書簡】

                                字余りを通じて、日本の中心で俳句を叫ぶ
                                その2 中西夕紀×筑紫磐井  》読む
                                (「字余りを通じて、日本の中心で俳句を叫ぶ」過去の掲載は、こちら )
                                評論・批評・時評とは何か?
                                その14 …堀下翔×筑紫磐井  》読む 
                                ( 「評論・批評・時評とは何か?」 過去の掲載は、こちら
                                芸術から俳句
                                その4 …仮屋賢一×筑紫磐井  》読む  
                                ( 「芸術から俳句へ」過去の掲載は、こちら



                                およそ日刊俳句空間  》読む
                                  …(主な執筆者)竹岡一郎・青山茂根・今泉礼奈・佐藤りえ・依光陽子・黒岩徳将・仮屋賢一・北川美美・大塚凱・宮﨑莉々香・柳本々々 … 
                                  •  4月の執筆者 (柳本々々、佐藤りえ…and more. ) 
                                   大井恒行の日々彼是(俳句にまつわる日々のこと)  》読む 

                                  【鑑賞・時評・エッセイ】
                                    朝日俳壇鑑賞】 ~登頂回望~ (百九~百十)
                                  …網野月を  》読む 
                                  【短詩時評 16号車】中澤系を〈理解〉しない
                                  -圧縮ファイル『uta0001.txt』を解凍することの困難-   
                                  … 柳本々々   》読む



                                  <前号より継続掲載>


                                  【短詩時評 15校目】蟻まみれの転校生が読む『桜前線開架宣言』 
                                  -ブルデュー・山田航・小池正博-   
                                  … 柳本々々   》読む
                                  【短詩時評 14時】フローする時間、流れない俳句 
                                  ―『しばかぶれ』第一集の佐藤文香/喪字男作品を読む-
                                  柳本々々 × 喪字男  》読む
                                   【俳句時評】 『草の王』の厳しい定型感 -石田郷子私観 -
                                   (後編) …堀下翔  》読む               (前編)  》読む
                                  【句集評】 『天使の涎』を捏ねてみた -北大路翼句集論ー
                                  (びーぐる29号から転載)  …竹岡一郎   》読む     序論 》読む
                                  【特別連載】  散文篇  和田悟朗という謎 2-1
                                  …堀本 吟 》読む 

                                  リンク de 詩客 短歌時評   》読む
                                  ・リンク de 詩客 俳句時評   》読む
                                  ・リンク de 詩客 自由詩時評   》読む 





                                      【アーカイブコーナー】

                                      new! 川名大論争 アーカイブversion1  》読む

                                      週刊俳句『新撰21』『超新撰21』『俳コレ』総括座談会再読する 》読む



                                          あとがき  読む


                                          【PR】


                                          2016年版<俳誌要覧・東京四季出版>の<俳誌回顧2015>
                                          筑紫磐井×中西夕紀×田島健一による鼎談 コンテンツ 》読む










                                          冊子「俳句新空間」第5号発刊!(2016.02)
                                          筑紫磐井「俳壇観測」連載執筆
                                          「最近の名句集を探る」












                                          特集:「金子兜太という表現者」
                                          執筆:安西篤、池田澄子、岸本直毅、田中亜美、筑紫磐井
                                          、対馬康子、冨田拓也、西池冬扇、坊城俊樹、柳生正名、
                                          連載:三橋敏雄 「眞神」考 北川美美


                                          特集:「突撃する<ナニコレ俳句>の旗手」
                                          執筆:岸本尚毅、奥坂まや、筑紫磐井、大井恒行、坊城俊樹、宮崎斗士
                                            


                                          特集:筑紫磐井著-戦後俳句の探求-<辞の詩学と詞の詩学>」を読んで」
                                          執筆:関悦史、田中亜美、井上康明、仁平勝、高柳克弘

                                          筑紫磐井著!-戦後俳句の探求
                                          <辞の詩学と詞の詩学>

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