2014年9月12日金曜日

平成二十六年夏興帖, 第三(山田露結・中村猛虎・陽 美保子・ふけとしこ・木村オサム・髙勢祥子・小林かんな・坂間恒子・前北かおる)




     山田露結 (「銀化」同人)

留まれば家族となりて朝顔ひらく

隣家より演歌聞こゆる墓参かな

壮年の終りの頃のにごり酒



     中村猛虎(1961年兵庫県生まれ。「姫路風羅堂第12世」現代俳句協会会員。)

たましいの溢れて水のないプール

ヴァイブレータうねり続けて原爆忌

夏シャツの少女の胸のチェ・ゲバラ

マネキンの手ばかり捨ててありて梅雨

短夜の折り鶴は羽閉じたまま

冷や奴フェイスブックに子の名前

百合折らん死ぬのはたった一度きり



     陽 美保子(「泉」同人)

どしやぶりの喜雨といはるる蠅叩

蠅叩こんなところに掛けてあり

蠅叩片手にさかえようちえん


     ふけとしこ

烏瓜咲いて夜通し降るといふ

狐の剃刀人の減るときの来て

回復期蚊帳吊草を裂きもして



     木村オサム(「玄鳥」)

夏燕パントマイムで砂丘行く

なめくじの蛇行シュヴァルの理想宮

音のなきからだあわてて大豆蒔く


     髙勢 祥子(「街」「鬼」所属)

睡蓮の葉の寄せてゐる柱かな

麗しきメロンの端の上がりたる

帰省かな鞄に鞄載せあれば


     小林かんな

大陸は昏し険しと蛇急ぐ

星涼し奴婢の運びし石の数

銀輪はモナコの夕焼を曳いて



     坂間恒子(「豈」「遊牧」同人)

原色の人となるまで緑蔭に

真っ白な真昼に逃がすあめんぼう

炎昼を渡り切るまで骨の音

夏の霧霽れて鱗の生えそろう

夏燕死者の飛沫がくちびるに

眼の奥に眼のあり蛇の衣そよぐ

晩夏かな覗けば竈火が二つ



     前北かおる(「夏潮」)

真青なる水羊羹の包装紙

折り取りて水羊羹の蓋の匙

水羊羹父を亡くして叔母親し







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