2013年11月15日金曜日

【俳句作品】平成二十五年 冬興帖 第三

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      早瀬恵子(「豈」同人 )
大輪の愛飼いならす冬薔薇
冬の園サロメのさらう赤と青
賜うたる裸形の背中ぬくぬくし


      前北かおる(「夏潮」同人)
本閉ぢて風邪の体を横たふる
かたはらに日だまりありぬ風邪の床
あれこれを枕まはりに風邪の床


      内村恭子(「天為」同人)
たちまちに見知らぬ広野雪しきり
外套のフェルト水夫の大きな手
もう雪を近く呼びたる水の街


      もてきまり(「らん」同人)
吹雪く夜のアブサン非想非非想天
針置けばビリー・ホリデイ大枯野
寡黙なるは絶滅危惧種か冬虹か


      岡田由季(「炎環」「豆の木」同人)
雪もよひ象牙鍵盤弾きにゆく
水鳥のこゑ軟骨のピアス穴
眠る山兵馬俑みな顔違ふ


      下坂速穂(「クンツァイト」「屋根」)
芒枯れて水の方まで流れむか
二三羽を残して空へ霜柱
塀や垣猫にうれしき冬日かな


      岬光世(「クンツァイト」「翡翠」)
マフラーの模様の国の人と会ふ
冬薔薇玻璃越しに手の休みなく
凍空をふりきつてなほ走りけり


      依光正樹(「クンツァイト」主宰、「屋根」会員)
朝の霜歩けばことにしづかなり
凍雲を響く雲とぞ見上げたる
水鳥の離れゆくなる趣きも


      依光陽子(「クンツァイト」「屋根」)
寒詣木立は帰路として残り
祖父を知る松のありたる障子かな
荒布寄せて潮枯れてゆく鉢のもの




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