2013年9月6日金曜日

平成二十五年 秋興帖 第一

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     池田澄子(「豈」「船団」所属。句集『たましいの話』『拝復』他)

鳶は鳶を呼び磯菊は咲き合える

化粧ポーチ財布ハンカチ貰った零余子

秋の蚊のさやかに脚を垂らし来る


     福永法弘(「天為」同人、「石童庵」庵主、「豈」元同人、俳人協会理事)

   自殺
藤圭子死にたる夜の蘆火かな

   病死
月夜姫夏目雅子にさも似たり

   他殺
白葉女句碑のかたへを穴惑ひ


     月野ぽぽな(「海程」同人)

死の前と後ろに虫の闇ゆたか

まだ見えぬ海の匂いの花木槿

うっとりと陽をのせて蛇穴に入る


     小林千史(「翔臨」)

猫町のはづれにのこる蛍かな

次のひと息が吸へぬ死鶉鳴く

頼まれもせぬ葬儀出し星流る


     原雅子

秋立つと唐桟縞の肌ざはり

踏竹に合はす足裏天の川


     杉山久子(藍生)

木の実降る降る助手席に白き犬


石鹸にひとすぢの髪きりぎりす

秋深むペットボトルの一句にも


     前北かおる(「夏潮」)

牛どちは俯き食うて昼の虫

塵つけて蜻蛉の翅なりしかな

水鏡冒してゆける秋の波


     堀本吟

天窓と銀河の底と擦れ合いぬ

二百十日だ眼玉をおさえすぎないで

地下室に逃げ込んだまま二百十日


     小野裕三(「海程」「豆の木」)

触角のごときもの持ち秋の旅

店番は妹任せ秋簾

見慣れたる屋号を囲む秋思かな


     中西夕紀

落ちし蟻しばらく泳ぎ稲の風

気まぐれに読む一冊や野分晴

死期来るや秋灯に手をかざしをる


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