2013年5月3日金曜日

【俳句作品】平成二十五年 花鳥篇 第一

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  池田澄子(「豈」「船団」所属。句集『たましいの話』『拝復』他)
初潮以降春は桜が咲いて散る
見下ろしの染井吉野が誘うのよ
鶯に沼明りして空虚空虚
日輪のぼーっと渡る八重桜
花ふぶき家で夫が待っている


  福永法弘(「天為」同人、「石童庵」庵主、「豈」むかし同人、俳人協会理事)
老嬢の手を取り申す花の昼
不器用を武器とし愛の四月馬鹿
待たざるに来し朗報や時鳥


   曾根 毅(「LOTUS」同人)
花の雨ことにやさしき地の窪み
地に憩う花びらのあり雨の後
散る桜この世に土の色残し



  もてきまり(「らん」同人)
空の青盗みてをんな藍を蒔く
肉体の真中みごとや春の滝
手廂で眺む大過去さくらばな
  

  小林かんな
壇密の留守に似ている海雲かな
鳥の影下唇に軽くふれ
小走りに葉桜の下戻りけり



  杉山久子(「藍生」「いつき組」)
金星の冷えをはるかに山桜
ものの芽に日の痕猫に突然死
土筆摘む人類最後のひとり



  内村恭子(「天為」同人)
花見舟来るたびに手を振り合つて
あらがひて潮の形の花筏
花屑と思へば幣でありにけり




  藤田踏青(「層雲自由律」「豈」同人、短詩型交流会「でんでん虫の会」代表)
処々に山桜の押しボタン
抜き去られる時の快感 桜花賞
桜の精 落し所を心得て
ヘラヒルル自画像ならぬ豆の花



   しなだしん(「青山」)
五月来て鏡のなかにある痛み
望遠鏡伸ばし海賊めく五月
運び屋のごとく五月に紛れ込む



   原雅子(「梟」同人)
このごろの雨つづきなる杉菜かな
帰りたき鴨ややたらの胴震ひ
畦を焼くそちこち爆ぜてゐたるなり



後藤貴子(「鬣」)
茴香の妻をのがれて闘技場(コロッセオ)
ひるがおに貌現れて腐りけり
犬と壺とわれの蹠の青黴よ



関根誠子(「寒雷」「炎環」「や」「つうの会」所属)
丸山町抜けて松濤(しょうとう)庭ざくら
引鶴や新歌舞伎座へお練り衆
花の宴一本締めの声揃ふ



   仙田洋子
 亡き友へ
花束を投げて春潮またしづか
スニーカーてんでんばらばらに脱いで春
Tシャツの脱ぎ捨ててあるはこべかな



   羽村 美和子(「豈」「WA」「連衆」同人、近著・句集『堕天使の羽』)
夜桜の取り囲んでる化学室
『宇治拾遺』横切る蝶の翳がない
交渉の真っ只中です花ざくろ


           早瀬恵子(「豈」 同人)
花花花早花咲(はなさき)(つき)花花花
光りつつにんげんぬけるさくら花
妙齢やタクトみだれてほととぎす



   陽 美保子(「泉」同人)
体内に知れぬ闇あり花曇
春雨の音もこの世の音といふ
目に映るものをまぶしみ春惜しむ



   西村麒麟 (「古志」) 
亀鳴くや手鞠をつかばもう一度
驕る時平家が楽し桜貝
念仏や春には少し春らしく
ことごとく平家を逃す桜かな
頼朝の箸やや長し桜烏賊


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