2013年1月25日金曜日

平成二十五年歳旦帖 第四

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平成二十五年歳旦帖 第二

 

依光陽子(「屋根」「クンツァイト」)

道枯れて人揺れてゐる影や影

繪の中へとび込む人や賀状来る

執拗に蜜柑の白を剥く汝よ

安らかに鷹を眠らす木の声は

くちばしの十全にして大旦

 

山田耕司(「円錐」同人)

黒松や箒に雌も雄もなく

春泥を舟のかたちにして去れり

逢着はたちしよんべんで掘る凍土

 

杉山久子(「藍生」「いつき組」)

昇り龍背におどらせて初湯かな

   一気飲みする珈琲牛乳

草の芽のひかりスキップ加速して

 

   小沢麻結(「知音」同人)

日銀短観データを拾ひ初仕事

塔の如枯木あの辺りがリンク

寒紅のなほ揺れてゐる心かな

 

   月野ぽぽな(「海程」同人)

元旦の空ていねいにやぶきます

夕暮れはうすむらさきの手毬唄

初夢にマンハッタンの音まじる

 

  小野裕三(「海程」「豆の木」所属)

郵便車平らかに行く七日かな

人の日の婆はひとまず鎮座する

餅花に届く掌ありにけり

 

榮 猿丸(「澤」)

嫁が君極楽鳥の餌皿に来

起震車の卓の下なり着ぶくれて

福寿草ひと訪ひくればテレビ消す

 

福永法弘(「天為」所属。「石童庵」庵主。)

石童山粛然としてけさの春

雪を催す庵の門松

刻既に鶏はまだまだまどろみて

 

堀本吟(昭和17年犬山市生(戦中派)。松山市育ち。生駒市在住。「船団」を経て「豈」同人。「風来」同人。大阪で超ジャンル「北の句会」を存続十年。評論集『霧くらげ何処へ』(1992年。深夜叢書)。句集を出せと言われつづけているのにちっともまとまらない。)

昭和26年天狼賞受賞の津田清子を思い『無方』までの道のりを讃える

歳旦や「天狼」一月号巻頭

晴着は賞の白きセーター

復た往かん砂漠も初日照るならん



         山崎祐子(「絵空」「りいの」「万象」)


鳴き砂に拾ふ流木二日かな


人日の丸大根を抜きし穴


神の井の碧きより汲み水祝


 


小林千史

初旅の涙わかれてきしごとく

酔うてゐて声かすかなり七福神

初夢で「きみと話がしたいのだ」

 

陽 美保子(「泉」同人)

初春や菓子の銘なる紫野

   袖の乱せし福笑の目

鳥雲に漁網一枚繕ひて

 

松尾清隆(「松の花」同人)

別冊の付録のやうに粥柱

傀儡女の箱の中より愛別離

別珍を天鵞絨と呼ぶ松の内

 

柴田千晶(「街」)

胡麻油の底に生家の初明り

餅花を背中に挿して叔父来る

葬列の海まで続き冬うらら


 

   堀田季何(「澤」「吟遊」「中部短歌」所属)

神いづれ白骨化する宝舟

どの神も嗤笑してをり宝舟

瓊玉も神も模造品(レプリカ)宝舟

宝舟船頭をらず(とは)に海

宝舟瓦解しぬふと日の射せば

宝舟すこしはなれて宝船

宝船しろがね積むやくがね尽き

懇ろにウラン運び来宝船

宝船沈めて渦やうすびかる

 

   外山一機(『鬣TATEGAMI』所属)

平成二十二年歌会始御製歌

木漏れ日の光を受けて落ち葉敷く小道の真中草青みたり

()()

()()()

()()けて

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平成二十三年歌会始御製歌

五十年の祝ひの年に共に蒔きし白樺の葉に暑き日の射す

()ぞと

()()

()()()

()()きし

 

平成二十四年歌会始御製歌

津波来し時の岸辺は如何なりしと見下ろす海は青く静まる

()()

(こし)()

()()()(はい)()

(なり)(ひと)

 

平成二十五年歌会始御製歌

万座毛に昔をしのび巡り行けば彼方恩納岳さやに立ちたり

満座(まんざ)()

二夫(にふ)潮路(しほぢ)

(ひめ)

流刑(りうけい)

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