2016年12月23日金曜日

【短詩時評33は年末企画で裏の雑談の後編】幸福について 安福望×柳本々々

【かかしの幸福について】

安福 やぎもとさんはオズの魔法使いのかかしが好きなんですよね。

柳本 ええ。ドロシーにいちばんはやくあえるのがいいなとおもって。ぜったいにいちばんはやくあえたひとがなかよくなるんですから。

安福 なるほど。いちばんはやくあえたひとがなかよくなるっていいですね。

柳本 映画で、ドロシーが別れるときに、かかしに、あなたがいちばん好きだった、っていうんだけど、そんなことよくいうなあとおもって。ライオンとかブリキがいるのに

安福 えっ、そんなこというんですねライオンとブリキショックですよ

柳本 でもしらない土地ではじめてともだちになったひとだからまあしかたないよねとおもって。ただそのときに自分はもしかしてブリキのほうにいるんじゃないかなとはちょっと心配になったんだけど

安福 ブリキのほうに……。

柳本 ええ………。

安福 ………。


【眼鏡の幸福について】

安福 やぎもとさんは眼鏡歴何年なんですか? 私は0年です。

柳本 そんなに実はないんですよ。ずっと裸眼の人生だったので。でもだんだん眼鏡って仮面みたいでいいなとおもって。それでさいきんかけてますけどかけるようになるともうずっとかけてますね。だからかけてみてシャア・アズナブルっていうひとのきもちが少しわかったというか。

安福 ……………。

柳本 ただよくみえなくてりょうてをばたばたしたり、柱にしがみついてることもあるけど。

安福 あっ、そうなんですね。ちょっとそっちの可能性も思ってたんですよ。

柳本 柱にしがみつく可能性をですか?

安福 いや、仮面の可能性です。

柳本 フェリーニの映画『81/2』がすきで、あの映画もまあ眼鏡映画なんですよね。あとマルクス兄弟とかウディ・アレンも眼鏡映画かなとおもう。ひとはだれしもマントをつけて前に出たいとかってやっぱあるんじゃないですかね。変装癖というか。ギブスを意味もなくつけてたりだとか。錫杖を握りしめてたりだとか。

安福 ああ、なんかわかります。眼鏡かけてると、眼鏡のひとになれますね。

柳本 眼帯をしたいとかいろいろあるとおもうんですよね。羽根帽子とか、鍵フックとか。

安福 船長のほう行ってますけど、でも会うひと会うひとに、どうしたんですか? ってきかれますよ。

柳本 そこは照れくさそうにするんでしょうね。

安福 ………………。


【生の幸福について】
安福 やぎもとさん、短詩時評で一時期死についてたくさん書いていたじゃないですか。竹井紫乙さん(http://sengohaiku.blogspot.jp/2016/09/tanshi27.html?m=0)とか小坂井大輔さん(http://sengohaiku.blogspot.jp/2016/09/tanshi26.html?m=0)とか。死って希望がありますか?

柳本 死に希望はないですよ。

安福 希望ないですか。

柳本 ないと思いますよ。でも死に近い場所に希望があると思います。ぎりぎり近い場所に。そういう場所にかえって生もたたずんでいるんじゃないでしょうか。

安福 ぎりぎりちかい場所かあ。

柳本 こないだふらふらまちを歩いていてそう思ったんです。これちょっとまずいかな、と思いながら。でもそれはそれでいいかなとおもって。

安福 ふらふら歩いてたんですか。あるいてそうですね。いいとおもいます。

柳本 いい、って……。でもふらふらオッケーだとはおもったんですよね。そういうときも人生にはあるのかなって。

安福 ふらふらオッケーかあ。あり、なんだろうか…。


【眼の幸福について】

柳本 さいきんヘンリー・ダーガーの画集みながらダーガーってどうしてあっちの世界にいるようにみえるんだろうって考えてたんです。奈良美智さんにはそれはないでしょう。

安福 たしかにダーガーはとんでますね。人にみせるつもりまったくなかったからかな。

柳本 奈良さんみてるとでもこっちへの意識ありますよね。

安福 なんですかね。やっぱり他者の眼を意識するかしないかじゃないですか。目の量かな。

柳本 あ、そうだ。それですよ。

安福 目の量? ああ、そうかあ。奈良さんのはじっとみてきますね。目は重要ですね。

柳本 やすふくさんの眼って●なのにじつはだんだんそれを大きく誇張することでやすふく的内面をもってきちゃってるとおもうんですよね。

安福 え、持ってきちゃってますか?

柳本 だからやすふくさんの●についてなにか書くのだとしたらたぶんもうすこしつっこんでかかなきゃならないんですよね。ただの●じゃなくてたぶん成長してる。たぶんそれは●を繰り返し描くうちにじぶんの文法としてとりこんだんだとおもいますよ。なんか●ばっかりになってきたな。

安福 おおなるほどねもうすこしききたいですけど

柳本 でも涙がでたじてんで●が変質したんだとおもいますね●も成長するんですよ。

安福 でもたしかに、奈良さんも眼が大きくなっていってるとおもう。たいてい大きくなっていくんじゃないかな


【幸福について】

安福 ちょっと幸福について考えてみると、幸福って、幸福なときはわからないですね。なくなってから、あの時幸福だったって思い出す気がしました。だから死ぬ直前に幸福について語るのが一番良さそうですね。全部終わってからじゃないと幸福わからない気がして。

柳本 死ぬ直前にすごく安っぽいことを思い出してがーんと思いながらしんでいく場合もあるとおもうんですよね。あたためますかってコンビニできかれてるシーンとか。いやいやこんなシーンいいよ、ってかんじで。いやこの思い出ちがうから、みたいに。もうこうなんていうかお花畑とかで手をつないであははははってお弁当食べてるシーンとかがいいのに。でもコンビニでなにげなくあたためますか、だいじょうぶですみたいに答えてるどうでもいいような風景が死の直前に流れるとか。

安福 それでふと思ったんですけど、フシギな短詩のミムラさん(http://haiku-new-space03.blogspot.jp/2016/10/blog-post_18.html?m=0)の短歌みたいな別に思い出したくもないこと思い出しそうって思いました。死ぬ直前ってたぶん、目を閉じてそうで。音だけ聞こえて、その音によって思い出すものが違いそうです。そうなると死ぬ場所が重要になりますね。なんかいい音の聞こえるとこがよさそうですね。眠ってるときも眼を閉じてるけど、聞こえてくる音で夢がかわったりしますよね。ふだん視覚って一番重要だけど、夢の中だと音が重要なんですよね。おもしろいですね。

柳本 あ、ほんとにそうですね。そうか、夢のなかでは聴覚がだいじになるってたしかにそうですね。ひとは耳を閉じられなかったからこそ、そこに幸福も不幸も受けとめざるをえないなにかがあるのかもしれませんね。目だと閉じちゃうからシャットダウンしちゃうから。

安福 でも、そうかあ、幸福も不幸も耳からやってくるんですね。なるほどです。
御前田あなたさんがみたくないものをみえないようにする魔法をみにつけたといっていたけれど、耳も聞きたくないものをきこえないようにする魔法がいりますね。ちなみに幸せって辞書ひくと、運。めぐりあわせ。って書いてあって、幸せって運なのかって思いました。

柳本 えっ、辞書に、幸せとはめぐりあわせだと書いてあったんですか。あ。ああ、そうなのか。そうなんですね。理解しました。
めぐりあわせってじぶんでシャットダウンできないことじゃないですか。だからしあわせの場所って耳にちかいのかもしれないですね。めぐりあわせっておもしろいなとおもったのが、基本的には意志と無関係なところですよね。もちろん努力とか意志でめぐりあわせをひきよせることはできるんだけど。でも運とか運びって努力ともちがうんですよね。だからこれからは、しあわせってなんですか、ってきかれたら、じきにわかるものですよ、って言おうとおもう。ああちゃんと幸福論の話ができたじゃないですか。よかった。

安福 しあわせ、辞書でひいてよかったです。あ、ちなみに辞書は学研現代新国語辞典改訂第四版のでひきました。これまだつづきがあって。不幸をあとでひいたら、よくないことや苦しいことがあって、めぐまれないこと。ってなってたんですよ。そうか、じゃあ幸せってめぐまれることかと思って、恵まれるをひいたんです。恵まれるをひくと、運よくよい物事を与えられるってなってました。二番目の意味が幸せである。でした。幸せってひとからもらうんかなと思いましたよ。火と一緒やなあって。いつかもらえるんですよ、きっと。信じてたらもらえるんじゃないですかね。だから、やぎもとさんがいうように、じきにわかるものだし、時機にわかるものですね。幸福は火をたくように時期が来たらとつぜんやってきますよ。

柳本 ああ、幸福は火なのか……。もうこれ以上わたしがよけいなことをいわないうちに次のパートにうつりましょう。


【蛸の幸福について】

安福 やぎもとさんの岩田多佳子さん(http://haiku-new-space03.blogspot.jp/2016/10/blog-post_28.html?m=0)の回のフシギな短詩、納得だったんですよ。わたしをばらばらにし、世界をいきいきさせるって。

やぎもとさんの文章よんで、ステンレスの木でわたしやたら蛸のことかんがえてたんですけど、なんでかわかりました。やっぱりこの句集のなかの私って蛸だなあって思ってしまいました。蛸とかの軟体動物って、足きってもまた再生するんですよね。

柳本 ああそうか。精神分析的主体って蛸的なのかなあ。おもしろいですね。

安福 うん。

逃亡をはかる親指いっぽん  岩田多佳子 
両腕を一年干したままの窓  〃

の句って切り落とされてるのに血が流れてないかんじがしてて不思議だったんですけど、蛸の足で考えたら、切って世界に置いていったとしてもまた再生するからそんなたいしたことじゃないですよね。

柳本 あ、ほんとだ。そうか。

安福 あとですね、

ひだり眼がナミブ砂漠から戻る  岩田多佳子

の句を読むと、なくした眼が戻ってきたりするんですよね。世界へ眼だけ偵察にいったみたいに感じました。

一本目の足がノサップ岬にある  岩田多佳子

この句だと、世界のいろいろなところに私の足跡、痕跡を置いていってる感じがしました。

母体から離れていこうとしてる腕  岩田多佳子

も母体が宇宙船のイメージがあって、腕は偵察船として離れていこうとしているみたいって思いました。

柳本 うーん、なんかすごいですね。納得です。

安福 あと、「わたしをばらばらにし、世界をいきいきさせる」ってわたしの一部を世界にお供えしているような感じもしました。
世界にわたしを差し出してるような。わたしを差し出すと世界っていきいきしだすんですね。

柳本 ああたしかにね、たかこさんの句集読んでいて、そういう感触ありました。世界にわたしを投げ込んでいくというか。ダイヴしていく感覚。うーん、そうかあ。すごい。

安福 あの、

だぶだぶの着物で立っている歴史  岩田多佳子

をもう一度考えると、この着物のだぶだぶって私を世界に差し出しつづけたから、身体が小さくなって昔の着物がだぶだぶになってしまったのかなって思いました。

柳本 安福さん、解釈師ですね。おもしろい。

安福 「ステンレスの木」というタイトルの句集だけど、柔らかいものがたくさんでてくるの不思議ですね。「ステンレスの木」っていうのはふにゃふにゃな私の理想の私なんですかね。この句集の中の私ってステンレスみたいな硬質でまっすぐな私になりたいんでしょうね。

柳本 ああ、そうなのか。ってこんかい、納得して相づちしか打てなかったので次のパートでがんばります。


【俳句の幸福について】

安福 俳句の話で、野間幸恵さんの『WATER WAX』を昨日寝る前に読んでたんですよ。俳句って、世界を剪定してるようなきがしました俳句は世界を調理してるというか

柳本 「なる」の文学ではないですよね、俳句は。川柳は「なる」の文学な気がするなあ。変身ものというか。だから川柳なら、古池をみたらカエルといっしょに飛び込んでいくとおもうんですよね、俺も俺もって。
そういうふうに「なっ」ていくというか

安福 「なる」かあ、

もう二度と馬は霧で出来ている  野間幸恵

をよんで、「もう二度と」と「馬は霧で出来ている」の間になんかめっちゃいろいろあったんじゃないのって思っちゃいました

柳本 その解釈おもしろいですね(笑)

安福 「もう二度と」と「馬は霧で出来ている」の間ごっそり抜けてるっておもったんですよ

つまづいて360度が旅人  野間幸恵

でワープ感じたんですよ。つまづいて ワープして 360度が旅人にって感じが

柳本 おもしろいなあ。この句集はたしかにアクロバティックなんですよね。で、なんでかっていうと、たぶん、言葉が水になっちゃってるからだとおもう。それが醍醐味というか。文法も液体化しちゃってるとういか。言葉や意味や文法の水漏れがおこってる。

安福 あ、さいごの

この世でもあの世でもなく耳の水  野間幸恵

がなんかすごくしっくりしました。耳に水はいったら、傾けないと水でてこないじゃないですか、耳から。その身体を傾ける感じが、なんかこの世でもあの世でもないかんじと合ってるなって。傾くってどっちでもないかんじがして。そうそう、横書きなのも水って横にひろがるから、横書きなのかなって

柳本 ああ、そうかも。たしかにプールみたいなかんじしますね。だから野間さんの俳句をよむと、俳句ってそもそもなんなんだってかんがえはじめますよね。それも思考が水化していくというか、俳句そのものが決壊するんですよね、ダムみたいに。それもおもしろい。水ももししゃべることができたらこういうんじゃないかな。「ぎゃくに、おもしろい」って。

安福 …………。


【雑談の幸福について】

安福 これいま話してることも記事になっていくんですか。

柳本 なっていきますね。この「なっていきますね」もいまなっていってますね。

安福 こういうのってでもあれですね、自分の意外性ってじぶんじゃわかんないですね。

柳本 そうかもしんないですね。

安福 ひとにいわれないとじぶんのことわからないです。

柳本 相手が、あっそんなこというんだ、にいつも活路があるきがしますね。それはひいては、自分はそんなことかんがえてたのか、につながっていくきがする。

安福 あ、それいいことばですね。ではその言葉で今年をおわりにしましょう。

柳本 あ、そうですね。じゃあ、そ

安福 それでは、よいお年を。


(画:安福望)





《附録:人生のテーマ曲10選》

【安福望の10曲】

1、映画『マグノリア』Save Me
2、映画『マグノリア』Wise Up
3、映画『LIFE!』space oddity
4、映画『喜劇とんかつ一代』とんかつの唄
5、小泉今日子「My Sweet Home」
6、ネクラポップ「人間の屑」
7、クレイジーケンバンド「コロ」
8、SPARTA LOCALS「POGO」
9、ZONE THE DARKNESS 「奮エテ眠レ」
10、あがた森魚「佐藤敬子先生はザンコクな人ですけど」


【柳本々々の10曲】

1、カヒミ・カリィ「Cat from the Future」
2、東京ナンバーワンソウルセット「夜明け前」
3、ボブ・ディラン「stuck inside of mobile with the memphis blues again」
4、椎名林檎「月に負け犬」
5、明和電機「明和電機社歌」
6、三上寛「小便だらけの湖」
7、ゲーム『ファイナルファンタジー1』の「カオス神殿のテーマ」(植松伸夫)
8、スピッツ「トンガリ'95」
9、映画『八つ墓村』の「道行のテーマ」(芥川也寸志)
10、矢野顕子「すばらしい日々」(奥田民生)

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