2014年1月31日金曜日

【俳句作品】  流体力学  / 西原天気


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   流体力学   西原天気

 稲垣足穂「弥勒」より
汝(な)より出づ尻子玉やら夜汽車やら

 セール『離脱の寓話』より
水を見て日を見て春の懈怠かな

 ギアツ『ヌガラ 十九世紀バリの劇場国家』より
花一片皿より皿へのりうつる

 龍膽寺雄『シャボテンと多肉植物の栽培智識』より
A子さん(四〇歳・河童)

 ユルスナール「老絵師の行方」より
緑陰にふたり水掻きの記憶

 トムキンズ『優雅な生活が最高の復讐である』より
ひね胡瓜もんだりピアノ鳴らしたり

 阿佐田哲也『ドサ健ばくち地獄』より
夕焼に魚影ひときは濃きところ

 ベイトソン『天使のおそれ』より
河童妻泣くときシャンデリアを見上げ

 權田保之助『民衆娯楽問題』より
皿いちまい海いちまいの初日かな

 ケストラー『機械の中の幽霊』より
湯冷めして地球最後の日の河童




【作者略歴】

  • 西原天気 (さいばら・てんき)

1955年生まれ。「月天」「尻子玉句会」所属。笠井亞子と『はがきハイク』を不定期刊行中。句集に『人名句集チャーリーさん』(2005年・私家版)、『けむり』(2011年10月・西田書店)。ブログ・俳句的日常 

1 件のコメント:

  1. 上記の書名を拝見すれば、天気さんの工作舎への近感なんとなくわかった、前よりは。それにしても河童だらけ。尻小玉にまた凝りし。。。狂歌大全のネタが95%まで打ち込んでいるWord。Docが1Million語を越えたところで文政かその直後の狂歌集にそういう河童一杯見つけた。天気さんの得意のシュールには事欠けるが、怪物よりも珍しい題であった泳ぎに関する七、八首を生かす親しみを感じる河童である。 敬愚

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